民事信託の活用 ~遺言書との比較~
| コラム
民事信託(家族信託)と遺言書との違い
相続対策と聞いて最初に思い浮かぶのが遺言書だと思います。遺言書は、本人の意志を相続に反映させる有力なツールです。財産の承継を内容とする点で民事信託と共通する部分があります。では、両者の違いはどのような点にあるのでしょうか。

1.効力の発生時期
遺言書は、遺言者が死亡した時点から効力を生じます。これに対し、民事信託は契約等信託行為をした時点で直ちに効力を生じます。この違いはどのように影響するのでしょうか。
超高齢化社会といわれている現代の日本は、高齢者が多いというだけでなく、高齢で判断能力がなくなってから亡くなるまでの期間が長期化しています。
判断能力がなくなると、財産を管理処分することができなくなり、通常の生活が困難になる可能性があります。亡くなった後より、亡くなる前の期間が重要になってきます。亡くなった後の遺言書よりも、認知症等で判断能力低下に対応できる民事信託が有効となります。
2.指定できる承継者の範囲
遺言書は、自分の財産を相続する者を指定することができます。この指定できる者は自己の法定相続人や縁のある人で遺言者が死亡した後に直接承継する者一代だけです。
これに対し民事信託は、委託者の財産を受益権に変換して、その受益権を第二受益者、第三次受益者と指定することによって、子そして孫の世代まで財産の帰属先を決めておくことができます。例えば、子のいない夫婦で、夫死亡後はいったん妻に承継させますが、妻死亡後は夫の家系である夫の甥・姪に承継させると指定することもできます。
信託は信託がなされた時から30年を経過したとき以後に現存する受益者がその受益権を取得した場合であって、その受益者の死亡までとされています(30年ルール)。従って、委託者本人の意志を長期にわたって実現することができます。
3.検認の有無
自筆証書遺言は、家庭裁判所にて「検認」という手続きをしなければ、法務局や金融機関は受け付けてもらえません。「検認」は、法定相続人の面前で遺言書を開封する手続きです。改ざん偽造の防止の意味合いがあります。これに対して、民事信託は契約時で効力発生していますので、何ら手続きなく(検認なしで)即時職務を遂行できます。
以上、民事信託を遺言書と比較してみましたが、どちらが優れているということでなく、それぞれの事情に合わせて使い分けることが重要です。