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第11話 海外進出するなら

2015年02月26日 バンコク便り

支店形態、子会社形態、どっちが得?

企業が海外で活動する場合には、外国企業とのM&Aや提携なども考えられるが、今回は海外支店形態と海外子会社形態の二つの進出方法について税金コスト面での有利不利を考えてみよう。

ご存じのとおり日本国内で登記された会社は、日本国内で発生した国内源泉所得はもちろんのこと海外で稼いだ所得に対しても法人税などを負担することになっている。だから世界のどの支店で発生した所得であろうとすべて合算したうえで日本の法人税などの計算を行うことになる。いわゆる全世界所得課税だ。しかし、この場合には所得を稼いだ国でも課税されるので、日本の法人税などを計算する際には外国税額控除を適用して二国間の二重課税を排除する仕組みがある。

一方で、日本以外の国で登記された子会社が海外で稼いだ所得に対して日本の親会社が法人税を負担することは原則的にはない。支店形態と子会社形態との違いだ。
一見、海外支店の形態でも日本で外国税額控除が適用されれば二重課税されることはないから子会社形態に比べて一概に不利とも思えない。しかし、進出先の国の税率や平成21年度税制改正で導入された「外国子会社配当益金不算入制度」などにより企業が負担する税金公ストは上記二つの進出形態のいずれを採用するかで異なってくる。

具体的に計算することにする。
① A社はT国に支店を設け、同国で10億円の所得を稼いだ。
② B社はT国に現地子会社bを設立し、b社が同じく10億円の所得を稼ぎ、税引後の儲けは親会社B社に全額配当した。
※T国の法人税率は20%、同国の配当に係る源泉徴収税率は0%とする。
※日本の法人税などの税率は40%とする。親会社の所得は便宜上考慮しない。

● A社の税金コスト
まず、A社はT国で稼いだ10億円に対して2億円(税率20%)の法人税をT国に納税する。次に同社は10億円に対して2億円(10億円×40%-2億円の外国税額控除)の法人税を日本に納める。結局A社の税金コストは4億円(T国の2億円+日本の2億円)となる。結局、手元に残るお金は6憶円(10億円-4億円)。お気づきのとおり日本で稼いだ場合と同じ税負担になる。

● B社の税金コスト
まず子会社bがT国に2億円(税率20%)納税する。そして当然b社の所得に対して親会社Bの税負担はない。次に子会社bは税引後の8億円を親会社Bに配当する。親会社Bは8億円の利益が計上されるが、「外国子会社配当益金不算入」制度により7.6億円(配当の95%)は益金不算入となる。子会社からの配当に対する日本の法人税の課税所得は0.4億円となる。そしてその法人税などの負担はわずか1600万円(0.4億円×40%)。b及びB社の税金コストは2.16億円(T国の2億円+日本の1600万円)となり、手元に残るお金は7.84億円となる。