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第8話 海外進出を成功させる条件

2015年01月01日 バンコク便り

新年に際し、数多くの進出企業の実態を見て来た者として、おこがましい限りではあるが成功するための条件ということを考えてみたい。

1 言語
近年、進出企業の傾向として常々感じていることは、人を雇用し経営を司る立場の方々がタイ語の習得を怠っているという点である。そもそも日常会話レベルの言語とは特殊な技術でも学問でもなく、人間として生まれたからには全く教育を受けていなくとも習得できるものだ。また私生活の場面でも、言葉を発して伝えることだらけなのであるから、会話が通じなくては不便この上ないだろう。タイ語を習得する気の無い方々は、当然通訳的な社員を雇用し業務を進める訳だが、その担当者が意思疎通のツールでしかない言語を操れるからと言って、それは業務内容を把握して実行する能力があるかということとは全く無関係だ。その様な社員に頼って他の社員への指示も行い、その経過や結果の報告も、そのただ一人の人物の脳というフィルターを通してしか得られない。そこで意思疎通の齟齬が業務に大きな影響を与えない筈はないと思う。何もタイ語の専門家になろうというのではない。最低限の日常会話ができる様になれば、周囲の人たちは全員教師となって教育してくれるのであるから、有り難いことこの上ない環境に置かれていることを認識した方が良い。

2 ローカル・マネージャー
重要性としてはこれが第一であってめぐり会う為のハードルの高さも第一だ。むしろこれを得られれば他の条件など整わなくとも成功間違いなし、とも言える。
言語を習得しようが、当地の制度を高度に理解できようが、我々がアウェイな立場であることは変わりない。それを補って、手足となる社員を適切に動かしてくれる中間管理職を得ることができれば、これほどの強みは無い。成功している組織には大抵、優れたマネージャーさんがいるものだ。もちろん孤軍奮闘で社員全員と渡り合っている駐在員さんも大勢いらっしゃるが。
自らの理屈に水を差す様だが、優秀なマネージャーに頼り切って管理を行っている組織に於いて、その当人が辞職してしまった場合の痛手は計り知れない。

3 会計税務・労務法務
昨今は日本人の経営する会計事務所や法律事務所があるので、実務に必要な専門知識はその様な事務所に頼ることになるのが普通だ。言語の問題も去ることながら、社会通念の共有ができている、ということのメリットが非常に大きい。日本ではこうだが、当地の制度はこの様な背景でこうなっているのだと説明を受ければ容易に得心が行くことだろう。
さらに、一つ一つのケースを経験として積み重ね、自らの予備知識を体系的に広めていくことができれば、これは理想的である。

3 現地化
聞かれなくなった言葉でもあるが、要するにどれだけローカル社員に業務を任せられるかということだ。ここ数年は特に、グループ企業全体における現地法人のプレゼンスが非常に大きなものとなり、また税務に於いては日本税務当局の最重要調査項目として在外法人に関わる費用を注目していることから、現地運営者の監督責任が大きく問われる時代となった。その意味で社員任せにしてはいられない、というのも事実だが、だからと言って隅から隅まで把握しようなどと考えれば本来の業務に傾注できず、業績は覚束ない、という結果は目に見えている。まさに本末転倒、ではないだろうか。

これは私の持論だが、ある特定の業務で得られる売上高VS給与額、つまり個別の損益計算を常に行うのが重要かと思う。ローカル社員ですべて対応できることに、数倍の給与を得ている管理者が関わっていればかなりの割合で各案件は赤字転落となる。同じ意味で、客先の管理者を含む打ち合わせを行う場合にも、その移動時間を含めた拘束時間×予測される時間給を考慮した対応をする様心がけるべきであろう。でき得るならば互いの担当者レベルで解決できることはそうするのが望ましい。となると、第1項の成果である社内コミュニケーションがどれだけ正確に取れるのか、に立ち返ってしまうのである。