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第7話 タイ進出企業の資金調達事情

2014年12月01日 バンコク便り

先月末に日系中小企業の海外進出を支援する仲間と共にタイ・バンコクのカシコン銀行を訪問し、同行の日系企業に対する融資体制についていろいろとお話を伺いました。同行はバンコク銀行、クルン・タイ銀行、サイアム・コマーシャル銀行と並ぶタイの4大銀行の一つであり、ジャパンチームと称し日本人31名タイ人49名計80名が日系チームとして活動している点も注目されます。日本人31名中28名は日本の地銀からの業務出向社員で構成されているようです。現在は27の日本の地方銀行と業務提携しているとのことですが、この他JBIC(国際協力銀行)とも提携している関係で、JBIC経由での提携先地銀を含めるとほぼ日本全国をカバーしているとのことでした。
このように進出する日系企業を資金的側面で支援する体制が整いつつあることは心強いことですが、タイへ進出する中小企業の資金調達事情をについて少し説明したいと思います。

現地金融機関の融資のスキームの代表例としてSBLCがあります。この仕組みは、
①まず日本の親会社が地元の地方銀行にスタンドバイL/C(信用状)の発行を依頼します。
②依頼を受けたその地銀は現地(タイ)金融機関に対して融資を保証します。
③これを受け現地(タイ)の銀行が無担保無保証で子会社(タイ)に融資するというものです。
この方法であれば現地法人がタイのバーツで資金調達が可能で、返済もバーツで行うことができます。現地の子会社がこの方法で資金調達する背景の一つには、リーマンショック以降日本の親会社の体力が弱まるなど、キャッシュをタイの子会社に回すことがなかなかできないというふところ事情もあります。

仮に親子ローン(親会社からの借金)で借りたとしても、円で借りて、当地ではバーツでオペレーションして返済資金を円で出さなければなりませんから、円高バーツ安になった場合は、バーツでの返済金は増えてしまいます。すなわちバーツ安になれば借金が膨らむので親子ローンでの資金調達は為替リスクがつきまとうということです。また、日本とタイでは金利水準が違います。このため金利の水準をどのレベルに設定するか税務上の取扱にも気を配らなければなりません。こうしたリスクをヘッジするためにSBLCを利用して、現地通貨での資金調達を選択する企業が増えているのです。

現状、タイは日本より金利が高く、いわゆる企業向けプライムレートに相当するタイのMLRは6.75%。もう一方でMOR(当座貸越レート)は7.4%です。親子ローンによる日本での資金調達であれば1~2%で済むということを考えると現地での資金調達は一見不利に見えます。しかし仮に為替変動の巾を2割で想定してみるとかならずしも不利とは言いきれませんし、現実1997年のアジア通貨危機の際にはバーツが下落し対応に苦慮した苦い経験もあります。また、実際には短期で4%前後という(MLR、6.75%よりも)低めの金利で調達できています。親子ローンよりもSBLCを選択する理由はここにもあります。日本政策金融公庫もバンコク銀行との提携により同様の方法での取り扱いが始まっています。

このほかに日本と感覚的に違うのは長期的資金の調達です。日本であれば長期資金といえば返済期間が5年、7年、10年などというのが一般的ですが、現地では日系企業イコール外国企業ですから金融機関は長期的な貸出しは避ける傾向にあります。長期資金は3年からマックスで5年という返済期間が一般的なようです。

親会社に資金が潤沢にある場合は別として、海外進出をする場合には現地での資金調達の事情もよく調査してしておくことが肝心です。