TEL:0120-799-099 受付時間:8:50~17:00 お問い合わせはこちら

更新情報

第94話 タイの交通事故

2022年01月31日 バンコク便り

タイの交通事故の多さは数十年前より有名なのだが、その多くがバイク絡みの事故である。2019年の統計ですでに22,000件を超え、その主な原因は飲酒運転や無謀な運転と言われるが、未だに親が子供二人を乗せて3人乗りをしている姿もよく見かける。つまり、エンジン付きで殺傷能力もある二輪車を、人力で動かす自転車と同様に考えている者が非常に多いということだ。元より交通法規上は「左端を走る」ことと定められているが、それを遵守するライダーなどすでに皆無である。またかつて、これは私が会社従業員のバイク後部席に乗っていた際の経験だが、如何にも四輪車の邪魔をする様な状況ですぐ前を横切ったバイカーに対し、乗用車は制裁的にわざとぶつけて来たのである。今現在よりもかなり身分差別が露骨であった時代らしくその社員は「ああ怖い怖い」とその場を立ち去るだけであった。

ところが、最低賃金が大幅に引き上げられると共にバイカー達の所得も上がったと思われる十数年前から、徐々に彼らの態度が横暴になり、その多くが無法者と化した。信号機のある交差点においても、交差する道路の交通量が少ない場合や、スクランブル信号が変わる刹那など、信号を無視し堂々と走り抜ける。一方通行も完全無視。特にコロナ禍が拍車をかけ普及してきた数え切れない数のデリバリー・バイクは、もちろんタイム・イズ・マネーという理由もあるが乱暴この上ない。薄給で虐げられていた者が金銭を得た途端、極端に態度を変える例はいくらでもある。

一方最近一番の話題は、警察官による有名眼科医死亡事故のニュースである。警官の不法行為はこの国の伝統の様なもので、以前にもこの項で報告させていただいたが、警官が犯罪行為を行い罪を免れた、あるいは免れようとした事件は枚挙に暇がない。しかも今回この警察官は当の死亡した眼科医の予約を入れ、通院途中に殺してしまったという話であり、現在8件の容疑で取り調べが行われている。容疑の中には飲酒運転、胡麻化そうとしてバレてしまったスピード違反(時速100㎞以上)、さらに運転していたDUKATIのバイクが警察署の押収品であった可能性もあるということだ。さらにさらに、容疑者の父親も警察の要職にありながら事件発覚直後、親子揃って寺に出家して逃げ切る算段であったらしい。捜査開始後彼らは実際に出家をしてしまったのだが、直後サンガ(仏教教団)により出家が取り消され、やむなく還俗したという大きな恥の上塗りを世間に晒したのである。