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第90話 洪水

2021年10月13日 バンコク便り

毎年この時期になると、洪水被害のニュースが繰り返される。元々海抜の低い国であって、その広大な平地で稲作を行い、タイは10年ほど前まで世界一のコメ輸出国であった。水源は遥かヒマラヤ山脈の雪解け水であり、ガンジス川からメコン川、そしてバンコクを流れるチャオプラヤ川と辿る訳である。温暖化により年々縮小したヒマラヤの氷河は私自身がトレッキングの際に視認しており、当然の事ながら氷河の氷解分も下流への流入増加につながる。

そんな経過の中、コメの生産でタイを凌ぐようになったのはそのガンジス流域のインドであり、メコンが海へ流れ出る地域、メコンデルタを有するベトナムということになる。

現在タイではその耕作地が宅地開発され水田の保水能力が小さくなったことがさらに洪水の原因となり、台風や豪雨が繰り返されるこの季節に被害を食い止めるのはダムからの放流調整の腕次第に違いない。10年前に起きた首都大洪水の被害にしても、例年にない降水量が主因とされながら実は主要なダム管理者間の連絡・調整不備による人災であったという声もある。当時は毎朝のニュースで首都北部の工業団地が次々と水没するのを目の当たりにし、都心まで水没してしまうのだろうかと憂う日々を過ごした。その事態に至っては政府も主要なビジネス・インフラ、特に私の住居、職場もあるシーロム地域が一国の金融機関の中枢であることから、首都を取り巻く水路に点在する水門を固く閉ざし、雨水の流れを東西に振り分けたことで何とか被害を回避した。しかしその影響で、特に首都の西側に当たる地域は大被害に見舞われたのである。首都機能を守るためその地域住民を犠牲にしたのは明白だ。

度々洪水災害に遭う地域住民は豊富な経験による知恵を蓄えており、普段から樹脂製のボートを確保していたり、元より階下の電気コンセントはすべて高い位置に設置されている。しかし水嵩が上がれば下水も何も一緒くたになるし、クロコダイルファームから多くのワニが流出してしまったり、実際川から流れてきた水蛇に噛まれた子供もいるので、危険な事態であることは確かである。こうした逞しい人たちの生産活動に支えられ都会の生活がある。