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第84話 学校生活と卒業式

2021年05月31日 バンコク便り

この国で知り合いの住まいにお邪魔すると、そのご子息が大卒であれば卒業証書授与式の授与の瞬間を捉えた写真が恭しく飾られている。かつては大学進学率が高くなかった為、確か15%くらいであったろうか、未だ学士様が自慢できる社会なのかと理解していたが、現在では約50%であるからそれ自体が自慢できるかと言えばそうでも無かろう。であれば何故卒業写真を恭しく掲げているのかと言えば、各大学の授与式で証書を手渡すのがロイヤルファミリーだからである。普通、高貴な方々と2スポットで写真に納まるなどという機会は人生でこの一度きり、あるいは高等学校の一部でも行われるというから一度か二度ということだ。その為卒業者全員が、貸衣装であるにしても原色の赤に金縁などの派手な長衣をまとい、この晴れ舞台に臨むという訳だ。

学校生活で日本との一番の違いと言えば、毎日の送り迎えということになろうか。我が家でも幼稚園入園前のナーシング・スクールから幼稚園、小学校、中学2年くらいまで毎朝の見送りは私の役目であり、親の義務とはいえよく10年以上も通ったものだと思う。誘拐の被害に遭わない様、幼稚園での夕刻の出迎えの際はその幼児の身内であると証明するカードを提示してから本人を呼んできてくれるというシステムを採っており、小学校では校門から昇降ポイント、そして裏口へ抜けるドライブスルーのルートが出来ていた。スクールバスなどは殆どの生徒が近隣の地域に住んでいる日本人学校ならまだしも、一般的に大規模な私立学校へ巨大なバンコク市のあちこちから通ってくる生徒の送迎を担っていたら朝の出迎えだけで日が暮れてしまう。という事情で、有名私立学校、大抵はミッション系だが、その周辺では当たり前の様に毎日朝夕に登下校の為の大渋滞が発生する。その時間帯限定で一方通行が設定されたり、警察官が出てきて交通整理をする。これも私立学校にとっては経済力の示威行為と生徒の安全を誇示する手段となる。しかも長時間をかけて通う生徒は学校周辺で親と朝食を取るケースも多く、もちろん下校時に空腹を覚える生徒も多いことから学校周辺には飲食店が立ち並ぶことになる。これらすべての原因が何かといえば「治安が良くない」ということである。まだまだとても小中学生だけで登下校をさせる環境には至っていない。この為生徒の数に等しい乗用車が朝夕送迎の為に走り回るのだ。私の自宅近くにもその様な超有名お嬢様学校があるので日々この光景を目にしている訳だが、親御さんの中には長時間通学の負担を避けるため、わざわざ近所のコンドミニアムを賃借し平日は父親と娘さんが泊まり込んでいるという実際の例がある。何と教育の為に家族が平日の間別居しているのだ。

この様な学校のほとんどは小中高からカレッジまたは4年制大学までの一貫校であり、生徒の内さらに上位を目指す者はその高校を出て国立大学へ進む。私立と国立大学の設備の差は歴然としており、国立大学といえば広大な敷地を要し、私が一時参加していたラグビーのクラブチームがよく練習で使用していたカセサート大学(上位3大学の一角)のスポーツ設備は考えられる競技すべてのグランドやピッチ、コートが整っている。また東北地方にあるコンケン大学は、農業大学ということもあり車でこの敷地の前を通過するのに10分程要する。