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第80話 軍隊

2021年02月28日 バンコク便り

この国の軍隊は兵力627,000人、2019年における軍事費が2,200億バーツ(約7,500億円)でGDPの1.34%、日本に於いては2020年における自衛隊兵力227,000人、防衛予算が5兆3,000億円でGDPの0.93%という比較になる。

元より敵を作らない外交を標榜する国だけあって軍事費は大きくないが、兵力対国家総人口を比較すればタイは0.9%、日本は0.19%ということで突出している。もちろんタイは成人男子に対し2年間の徴兵義務を課しており、逆に日本においては常に応募者不足の状態にあることも大きい要因だ。

また、タイ国軍は王室の近衛兵が始まりであり、今現在も正確にはタイ王国軍という名称で、その指揮権は国王陛下にある。従って軍の存在は防衛手段のみに非ず政治行政に大きな影響力を維持しており、これまで何度も軍事政権が成立している。大まかに言えば正しい政治が行われずどこかで一線を超えると軍が立ち上がり強制的に政権を掌握し、国の安定を図った上で民政へ政権移譲すると、こういう手順が繰り返されているのだ。軍政、民政に限らず何かの行き過ぎや一時的な過熱化で流血騒ぎで暴力沙汰になることもあるが、殆どのクーデターは無血で行われる。ましてや内戦などはあり得ない。少なくともこれまでは、どの様な対立、争いがあってもすべて国王陛下の手のひらの上で行われるもの、と理解されていた。ところが昨年から始まった民主化運動ではまさにこのタイ王室までが批判の対象となり、隔世の感は否めない。

しかしまたこの項に於いても非公式な金銭の流れに触れることになるが、市民の間ではよく「軍隊は上から金持ちになり、警察は下から金持ちになる」と言われる。

確かに軍は政治行政上特別な利権を保持しており、公的にも今現在の様に軍事政権が長期間維持されれば内閣や国会において多くの軍出身者が要職を占める様になり、また非公式なことで云えば、バンコク都心近くに保有する広大な軍事用地内で行う営利行為はほぼ治外法権である。また空軍の管理下にある民間空港内でも、テナントの権利は空軍高官やOBが独占していると云われる。この様に日本であれば憲法違反ではと指摘されるような大型利権がまかり通ることから「軍隊は上から」と言われるのだ。

逆に警察官は、小さな交通違反を厳しく取り締まり、違反切符を切らないのと引き換えに個人的な見返りを得ることが昔から定着している。また市内の歩道に並ぶ屋台にその営業区画を割り振る権利は管轄警察署が握り、さらに飲食店や風俗営業の店の中には、営業時間制限その他の規制で取り締まられぬ様、いわゆるみかじめ料を警官に支払っている場合もあるし、飲食店でのタダ飯は常識だという。市民から絞り上げるこの賄賂を上官に上納する習慣も確立されており、これが「警察は下から」という訳である。ずっと以前、クライアントさんが警察官幹部を接待するというので同席を求められたことが一度だけあるが、まあその料金がタダのような値段で驚かされたものだ。