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第78話 政治の季節

2020年12月25日 バンコク便り

国の状況にほぼ関わりなく4~6年位のインターバルで政治運動が行われる。日本でも報じられている通り、学生や30代までの都市知識層による民主化運動が続いている。15年~6年前に吹き荒れたデモ騒ぎは、ただ一人の政治家(後半はすでに海外逃亡中の刑事犯罪人であった)の差し金で、その資金力に群がった後継政治家、ばらまかれる日当を得て参加した農閑期の農民により引き起こされた、全く的外れな主張を繰り返した運動であった。その結果多くの人命が犠牲となり、一般市民も迷惑を被った。

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さて彼らの要求は①プラユット現首相の退陣②現政権が行った非民主的な改正憲法の再改正③王制改革の3点だ。③についてはこれまで「不敬罪」という法の厳格な運用により完全にタブーとされていた主張が一夜にして覆された感があるが、他の2点は極々常識的なもの。私も含め、現政権が軍部のクーデターにより成立するまでの長きに亘った政治騒乱を思えば、兎にも角にも安定した生活を実現し維持してくれた現政権に対し、非民主的な政策と感じてはいてもつい贔屓目に見てしまう都市住民が大方を占めていた筈だが、過去のいきさつを経験していない若者たちが「誤りは誤り」と立ち上がったということ。ところが今回は主役が知識層なだけにあくまで平和裏に行われ、過剰反応した政府側が警察を動員し薬剤入りの高圧放水をしてしまったケース以外は小競り合いが起きた程度だ。それでも首都でデモを実施する以上、一時的に交通遮断をしてしまうことから逃れることはできないが、毎回夜半には皆で清掃した後に整然と帰宅するという行儀の良さなのだ。10月には参加者が3万人にまで膨れ上がったが、その後は散発的に5000人程が集まる様になった。

その運動を主催した者たちは随分以前からジョシュア・ウォンなど香港の民主化運動の指導者と交流していたとのことで、政権の弾圧を受けにくい運動のノウハウを得ていたのであろう。ただ現状を見ていると、誤解を恐れずに言えば不法行為は行わない、住民に迷惑をかけないというあまりに紳士的な行動故に大きな成果も得られていないという一面もある。政権側も世論を敵に回さぬ様ある程度ソフトな対応をしながら何も決断しないという日々が続く。政権幹部から時折発せられるコメントには何の論理性も説得力も無く、打つ手が無い為ただ傍観するしかない様に見える。ここへ来て首相経験者を3名交えた和解委員会を開催するなどと意見が交わされているが、この期に及んで官製の委員会など噴飯モノだ。若者たちには、正しい主張はどれだけでも時間をかけ、国民の理解が進み多くの支持を得れば体制は変わるのだという信念を貫いてほしいと思う。