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第193話 ふるさと納税派?エンジェル投資派?

2021年05月31日 所長の眼

今回の話題は「エンジェル税制」についてです。敢て「ふるさと納税」と並び立てる必要もないのですが、節税効果を持つ二つの制度としては所得控除としての計算の仕組みが大変良く似ているのです。総務省の発表によると「ふるさと納税」の令和元年度実績の寄付金額は4,875億円、受け入れ件数は2,334万件で、このうち新潟県の受入額は95億円ほどでした。節税の制度としては後発の「ふるさと納税」がこれほど普及したのを横目に「エンジェル税制」の知名度や実績はいま一つと言えます。

さて、今回スポットをあてた「エンジェル税制」を一言で説明すると、ベンチャー育成のために投資した投資家はその年に税制上の優遇措置が適用されるということです。具体的には次のいずれかを選択します。

  • 優遇措置A:投資額のうち2,000円を超える部分を所得控除できます。
  • 優遇措置B:投資額をその年の株式譲渡益と相殺できます。

Aの場合は、「ふるさと納税」と計算の仕組みは同じです。「寄付」なのか「投資」なのかという違いはありますが金額が同じであれば支出した年の所得控除としての節税効果は同じということになります。

ふるさと納税の一般的な利用の判断は「寄付」に対する節税額と「返礼品」の内容が大きな関心事です。この点に関して総務省は寄付に対する返戻割合を3割以下とするよう通知を出していますので、節税額と返礼品の価値との損得だけではなく満足度合の要素も加わるのかもしれません。ハイリスクもなければハイリターンもありませんし、金額的にも少額なものから高額なものまで幅広い選択が可能となっており使い勝手がよいことが普及した理由でしょうか。

対してエンジェル税制は株式投資が対象ですからハイリスク・ハイリターンとなります。リスクとしては資産価値の減少、破綻すれば資産価値はゼロになる可能性がある反面、株式公開やM&Aによって株式売却ということになればハイリターンを手中に収めることができます(ちなみに株式売却時においても税制上の優遇措置あり)。ということは投資案件を吟味し将来性を見抜くことができるのであれば投資と節税が同時に成立するので願ったり叶ったりと捉える輩もいらっしゃるでしょう。しかし、投資ゆえにある程度まとまったお金が必要になることも確かです。最近では直接投資による方法以外にもネットを活用した株式投資型クラウドファンディングによる比較的少額な投資も可能となっており投資する側のすそ野が広がっています。

もちろん投資対象となるベンチャー企業がエンジェル税制の対象となることが大前提ですが、起業家の相談窓口は各都道府県に置かれていますので資金調達の選択肢の一つとして利用を検討することもできます。

今回は「エンジェル税制」を「ふるさと納税」との対比で節税の観点を交えて説明しましたが、ベンチャー企業の育成の一助になるという動機があってこそです。