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第192話 事業再構築補助金と労働生産性

2021年04月30日 所長の眼

1兆円を超える破格の予算規模で実施される事業再構築補助金制度について前2回にわたりその概要を紹介しました。今回はその申請における勘所はどの辺りにあるのか考えてみます。

事業再構築補助金の事業類型は、通常枠、卒業枠、グローバルV字回復枠、緊急事態宣言特別枠の4つがあります。それぞれの類型によって要件が少々異なるものの共通要件は次の3つとなっています。

  • 売上減少要件
  • 認定支援機関要件
  • 付加価値額要件

このうち、①と②は形式的に判断することができますが、「付加価値額要件」については『補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること』(グローバルV字回復枠については5.0%)となっており、具体的な数値目標が設定されています。年率3%であれば3年計画では9%、5年計画では15%という計算になりますので、事業計画の中身が問われる部分です。

また「付加価値額要件」について公募要領には次のように記されています。

  • 付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却費を足したものをいいます。
  • 成果目標の比較基準となる付加価値額は、補助事業終了年度の付加価値額とします。(以下省略)

「付加価値額」に掲げられている「人件費」とは、従業員給料・賞与、退職金、役員報酬、福利厚生費や社会保険料負担などの法定福利費が該当すると思われます。

「営業利益」は、そもそも「人件費」や「減価償却費」を差し引いた後の利益ですから、人件費をしっかり計上したうえで営業利益も確保しなければなりませんし、補助金による設備投資で新たな減価償却費が発生することを考えればそれなりの営業利益となりますので、事業再構築によりもたらされる付加価値額の増加については安易ではなく根拠ある事業計画で示す心構えは必要です。換言すれば事業再構築に挑戦し、いかにして企業の生産性を高めるのか、あるいは一人当たりの賃金上昇に反映させられるのかどうかが問われるのです。

今回の補助金制度の背景には、2000年代に入ってから今日まで日本企業の労働生産性が伸び悩んでおり、先進国の中でも見劣りしているという現実があります。そのうえ大企業と中小企業の1人当たりの賃金比較をすれば、中小企業に分が悪いのは容易に想像できます。いみじくも「付加価値額」の増加で補助対象事業としての適格性を判断することになっていますので、制度の背景を理解し、審査員が目を細めるような勘所を掴んだプラン作りを心掛けていただければと思います。