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更新情報

第188話 デジタル化と税制改正

2020年12月25日 所長の眼

年末恒例の税制改正大綱が12月10付で発表されました。といっても、個々の具体的な内容は紙面の都合でご紹介することはできませんので、キーワードを絞って私見を交えお話ししたいと思います。

例年の大綱と比較しての第一印象は「デジタル」や「DX」といった言葉がやたらと目につくことです。デジタル社会の実現に向けたDX促進のための税制や押印廃止を含む税務手続のデジタル化など過去の大綱では登場しなかったIT用語がとにかく目につきます。

新型コロナ感染症の拡大の影響に伴い給付される助成金や給付金についてはその申請手続きの煩雑さや対応の遅れから混乱が生じ、日本が目指すはずの行政のスマート化とは程遠い現実を目の当たりにしたのは記憶に新しいところです。余談ですが、最近注目されている若干35歳で台湾の閣僚(デジタル担当)入閣を果たし活躍するオードリー・タンはコロナ禍におけるマスクの在庫管理にITを駆使し感染防止に大いに貢献したようです。彼のスマートな対応ぶりは私には新鮮に映りました。比較するわけではありませんが、菅政権で新たに発足する「デジタル庁」が目指す行政のDXに注目しています。

税制改正大綱でも〝デジタル技術を活用した企業変革〟という意味をDXという略語に込め「DX投資促進税制」の創設が明らかになっています。

制度の内容は、一定の要件を前提としていますが、デジタル(D)要件と企業変革(X)要件をクリアすることで特別償却または税額控除が適用できるというものです。この税制はデータ連携を必要とするようなある程度の規模感をもった企業向けの制度のようですが、今後明らかになる詳細に注目してみたいと思います。この他に研究開発費税制に自社利用のソフトウェア開発費用についても対象に含めるなどの改正が行われます。

納税環境のデジタル化については次の2点。

  • 税務関係書類における押印義務の見直しにより税務署長や地方自治体に提出する税務書類ついては押印義務が廃止されます。
  • 電子帳簿等保存制度はその要件が大幅に緩和され事前承認制度の廃止などで手続きの簡略化が図られます。また、ペーパーレス化促進の観点から領収書等の原本保存をスキャナ利用にするためのこちらも要件緩和になります。

コロナ禍を機に官民あらゆる情報のデジタル化が加速するものと思われます。もちろん規模の大小に拘わらず企業の対応によっては将来の命運が左右されるかもしれません。オードリー・タンはその著書「デジタルとAIの未来を語る」の中で「新型コロナウイルスを防ぐための最良の方法は、やはり石鹸で手を洗うことであり・・・デジタル技術で置き換えることなどできません・・デジタルが石鹸に取って代わる技術になったわけではありません。」と本質論にも触れています。しかし目的を達成するための技術ではあるもののその技術でコロナ対応に差がついた…としたら、侮ることはできません。