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第71話 コロナウイルス禍の現状と今後

2020年04月01日 バンコク便り

3月26日現在までの感染者数は934名(執筆時点、現在は2,258名)、死亡者数4名(同じく23名)と発表されている。日本と比較し人口比を考慮しても大きな数字ではない。が、これは日本と同様簡単に検査を受けられる環境に無いため、現実の感染者数を示しているとは思えない。また社会構造とそれを反映した医療システムや全体の病床数を考えれば、容易に医療崩壊に結びついてしまう可能性は低くない。

教育環境が大きく改善されたとはいえ、当地では依然伝統的経済格差が大きく、その格差と高等教育を受ける機会は直結している。街を歩けば都市知識層と現業職、地方へ行けば富裕層と零細農民および現業職の区別は一目瞭然で、服装や言葉遣いが全く違う。

医療環境を見てみると、1,000人あたりの病床数が日本では13.7、当地では2.3と人口比率を考慮するまでも無い歴然とした差がある。しかもその内大きな割合を占める、社会保険適用による安価または無料で受診できる国公立病院や庶民向け私立病院では、重症化した場合においても高度医療を受けられる可能性はかなり低い。逆に外国人や民間傷害保険を有する富裕層、中規模以上の企業従業員でなければ中々利用できない一流大規模医療機関では、日本の大学病院と同等あるいはそれ以上の高度医療設備が整っているが、その数は首都バンコクでも十機関に満たない。

上記を考え合わせれば、健康・衛生に対する意識の高くない、さらに居住環境の宜しくない大多数の人たちの感染リスクが高く、逆に高度医療を受ける機会が極端に少ない、ということになる。この意味で今後の状況はかなり深刻であろうと想像する。

首都バンコクでは食品・医薬品販売以外の商業施設、娯楽施設はすでに閉鎖、レストランも持ち帰りとデリバリーのみの営業、本日より非常事態が宣言された。その結果約30万人とも言われる近隣諸国(ミャンマー、ラオス、カンボジア)からの出稼ぎ者の多くが職を失い、国境検問所に殺到することとなり、政府は感染の輸出を恐れ一旦は国境封鎖策を取ったが、あまりに多くの人が押し寄せたため、今度は暴動を恐れ再び開放した。この人たちは正に上記の意味で相当感染率が高い集団では無いだろうか?その集団が満杯の長距離バスに乗り合わせている光景は想像したくもない。

一方、経済の停滞に対し政府は①社会保険料率の一時引き下げ②源泉徴収税率の一時引き下げ、というのが企業やその従業員向けの緩和策を施行。約300万人とされる日雇い、臨時雇い労働者に対しては、月当たり5,000バーツ(約17,000円)を支給する方針ということだ。これは支給対象者や支給方法の確定が困難ではないか。この様な労働者は未登録、未申告のケースが多いであろうから。

企業に対する支援は無いのか、という意見も聞こえてくるが、これはほぼあり得ない。首都の中心で反政府デモ団体が長期間交差点を占拠した2013年の騒乱事件では、クライアントさんの社員が流れ弾に当たって即死したり、実際に私の目と鼻の先で群衆に向かいグレネード弾が撃ち込まれ8名が犠牲となったがその状況下、法人所得確定申告期限の年間ピークを迎え、期限延期が公示されほっとしたのも束の間、その後被害地域の企業のみに限定されると発表があり大変な目に遭った。自宅や事務所周辺にバリケードが張り巡らされ、ライフルで武装した多数の国軍兵が並ぶ中で、てんてこ舞いさせられた強烈な記憶である。