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第179話 気になる記述、税制改正大綱

2020年02月28日 所長の眼

自民党と公明党による令和2年度の税制改正大綱は昨年の12月に公表されました。例年どおり本年3月末の法案成立に向けて国会で審議中です。改正項目の中身については別の機会に譲りますが、今回は大綱に記載された気になる記述についてのお話しです。それは、前年の大綱にもほぼ同様の内容で記載されていたほどの肝いりです。少々異例の2年連続の記載は何を暗示しているのでしょうか。他方、同時並行的に内閣総理大臣は昨年9月に公表された税制調査会の提言「経済社会の構造変化を踏まえた令和時代の税制のあり方」に対して、今年の1月10日付でさらに具体的な審議を求めていますが、そこにも同様の記述があるのです。これらを考えあわせ今後の動向にも大きな注目が集まるその内容とは?

それでは大綱から抜粋してその内容を紹介しましょう。『資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築と格差固定化の防止』と題して、『高齢化の進展に伴い、いわゆる「老々相続」が課題となる中で、生前贈与を促進する観点からも、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築が課題となっている。今後、諸外国の制度のあり方も踏まえつつ、格差の固定化につながらないよう、機会の平等の確保に留意しながら、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直し、資産移転の時期の選択に中立的な制度を構築する方向で検討を進める・・・』というものです。大変わかりにくい話のように思われるかもしれませんので、私見を交えて解説します。

ん十年前のことですが、私は「贈与税」は「相続税」の補完税と教えられました。それは、相続税の課税回避を防止するために贈与税が機能しており、生前贈与に対して贈与税課税が行われることで意図的な相続税回避を防止できるというものです。正に贈与税率が相続税率よりも高く設定されてる理由はそこにあるといえます。

ところで、大綱には『資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築・・・』とあります。これは、「贈与税のいくつかの政策的な非課税制度や一人一人に毎年適用される110万円という贈与税の基礎控除をフル活用すれば、資産移転に対して課される税負担をある程度コントロールすることができてしまう。諸外国の制度を参考にしてその辺りの仕組みを考え直してみてはどうか。」と、私なりに解釈しています。

過去に税制調査会が諸外国の制度を紹介していますが、そこには二つの考え方があります。米国式の生涯にわたる贈与の累積額を含めたところで相続税を課税するタイプのものと、ドイツ・フランス式の生前一定の期間(独10年、仏15年)の贈与の累積額を含めたところで相続税を課税するタイプです。このような過去の生前贈与の累積額を相続財産に積み上げ課税する制度では、いかに生前贈与の累積額を正確に把握することができるかどうかが成否の分かれ目となるでしょう。

ここで、思い出す話題があります。金融機関の預金口座とマイナンバーとの紐づけを義務化することについての検討要請が今年の1月に総務相より関連省庁に出されています。義務化実現による名寄せ効果は過去の贈与の累積額の把握に一翼を担うか?こちらも今後の動向が気になります。