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第69話 タイの移転価格税制への対応

2020年02月20日 バンコク便り

Q: 最近専門家によるセミナーにおいて、いよいよ2019年決算に伴い移転価格税制への対応が強制されると聞き及びましたが、概要をご教示いただければ幸いです。

A: グループ会社に対する年間売上高が2億バーツに達した企業が対象になります。税務当局は先ずグローバル化に沿った制度施行を行いますので、OECDが立ち上げたBEPSプロジェクト対応を2020年5月29日を期限として対象企業に実施する様、罰則を伴う規定を設けました。しかしその後実際のレポート作成に関する具体的なひな型もインストラクションも発表されず、各対象企業は困惑したままの状態でした。実際BEPS対応の国際的なマニュアルでは、親会社が作成する「マスターファイル」子会社が作成する「ローカルファイル」について、中小企業が対応するにはかなり膨大なデータを抽出整理する必要があります。

その様な状況の中、当局は通達により「確定申告書別表」というA4 x 2ページ程度の記載内容とひな型を示し、これにより移転価格税制への対応とする旨を公示しました。また今月中に各地(バンコク、サムットプラカーン、チョンブリ等)で歳入省主催のセミナーが開始され、ちょうど執筆中の本日、バンコクでの初回セミナーが行われました。その内容概略は以下の通りです。

  • 対象企業は出資率50%以上のグループ会社に対し年間2億バーツ以上の売上を上げている企業。
  • 当面の義務は、通達で示された「関係会社取引に関する年次報告書(Disclosure Form)」を確定申告書別表として添付すること。
  • 「マスターファイル」および「ローカルファイル」については、歳入省より後日書式を提示し、これに従い対象企業が作成する。今後5年以内に、税務当局が各企業の調査を行う。

遡れば国際会計基準を批准した時にも即座にタイ会計基準は国際会計基準に従うものとしてタイ財務報告基準を策定しましたが、その後中小零細企業の被るリスクについて会計関係者の間で物議を醸し、待たせた挙句に結局は「非上場企業に対する暫定免除事項」を大幅に定め結局はほぼ影響が無かったという経緯を思い出します。私見ですが、今回も③をこのまま中小企業に強いるには負担が大きすぎますから、いずれ企業規模による制限、免除についての通達があるのではと想像します。