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第177話 税の機能と税制改正大綱

2019年12月20日 所長の眼

12月12日付で与党による来年度の税制改正大綱が公表されました。冒頭から横道に逸れてしまう話で恐縮ですが、ご承知のように毎年行われる税制改正ではありますが、そもそも税ってどんな役割があるのかなどということを整理してみたいと思います。その辺りを知るすべとして私ども税理士のバイブルともいえる著書「祖税法」(昭和51年初版、金子宏著)の冒頭で記されている租税の3つの機能を紹介します。

1つ目の機能、「租税本来の機能は公的欲求(財政需要)を充足することにある。」というもので、ごもっともな機能です。自ずとそのために必要となる厖大な資金の大部分を租税に依存することになるわけですが、「租税とは、係る資金の獲得を目的として、直接の反対給付なしに、私人の手から国家の手に移される富の呼称にほかならない。」としています。明解です。

2つ目の機能は、「再分配」です。「国家は富の分配状態に対して中立的であるべきで、それに介入することは許されない。」というかつての考え方から、種々の社会問題の登場とともに、その解決のために「再分配」は国家の正当な任務として考えられるようになったと説明されています。

3つ目の機能は、「景気調整」です。「景気の後退期には、税負担の軽減と政府支出の増額によって、民間の可処分所得の増加をはかり、それによって投資と消費を刺戟することができ、逆にインフレーションの時代には、税負担の増加ないし減税規模の縮小と政府支出の削減によって、民間の可処分所得の減少をはかり、もって投資と消費を抑制することができる。」とあります。

1つ目の機能は別格として、2つ目と3つ目のように世の中に対する様々な調整機能が期待できるのであれば、税制改正が行われる都度期待されるのは、その機能の発揮にあると言えます。そして、今回に限ったことではありませんが、特に注目されるのは「景気調整」機能ではないでしょうか。

ということで、その観点であらためて今回の税制改正大綱をチェックし、私なりに見つけたキーワードを2つ紹介します。

まず、「投資」です。というのも企業の大小にかかわらず次世代のイノベーションを担うベンチャー企業への投資については、投資額の最高25%を損金算入等することができるという制度が創設されます。本来は資産計上すべき「投資」ですから画期的な制度といえます。また、個人所得税でもNISAの投資期限の延長を軸に改正されます。

次に、敢て拾ったキーワードは「5G」です。5Gについて「経済社会や国民生活の根幹をなす情報通信インフラ」と位置付け、国家戦略として5Gシステム構築を進めると明記されています。

そのほか、「グローバル化」、「デジタル化」といったポイントもありますが、税制改正が効果的に機能し本来の役割を果たしてくれることを願ってやみません。