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第66話 バンコクの邦人社会

2019年11月30日 バンコク便り

今や5万人を超えたバンコク在住の日本人、その70%以上がスクムビット通りのBTS(通称バンコク・スカイトレイン)のナナ駅からエカマイ駅という5駅間周辺に居住している。学童がいる家庭では、子息のほとんどが通う日本人学校のスクールバスがこの限られたエリアからの送迎に限定されていることから、日本人向けのマンション、レストラン、スーパーマーケット、美容院、クリーニング店から幼稚園までがこの地区に集中し、利用する際には日本語だけで事足りると、実に便利な環境が確立されている。

それぞれのヴォリュームで云えば、日本人学校の生徒数は小中学校合わせて約3,000名、またバンコクの和食レストラン件数は1,400件を超えているらしい。

この様にビジネスという観点から見れば、在住邦人向けのBtoC事業が膨れ上がる土壌が整っているという意味でも好ましいことではある。

では在外邦人としての同胞意識というものがあるかといえば、当然ながら無い。5万人規模の社会の中で、その殆どの人たちがビジネス目的で居住しているのだから、直接の顔見知りでなくとも何処かで間接的な繋がりがあるかも知れないという、ましてやその7割以上が狭い地域で生活しているとなれば、ある意味互いが鬱陶しい存在とも云えるのではないか。

かつて(30年ほど前)にちょっとした業務目的でネパールの首都カトマンズに出かけたことがある。当時のネパール在住邦人は約500名、互いに顔と名前が知れている社会であったので、一人の方と知り合えば「ではXX社の(あるいはJICAXXプロジェクトの)XXさんを紹介してあげよう」などという調子で、とんとん拍子に人の輪が広がった。私が20代の若さであったことも幸いしある駐在員の方(もちろん初対面)のご自宅で夕食をごちそうになり、さらに別の方を誘って麻雀を打とうということになった。その頃のカトマンズといえば中心地でも午後8時を過ぎれば真っ暗闇という本当に娯楽の無い環境にあって、話し相手に飢えている(失礼!)状態でもあっただろう。ひとつ驚いたのは、麻雀パイを床に落とした奥様が「XXちゃん、ちょっと来て」と住み込みのメイドさんを呼び拾わせるという所作を見たことだった。「ああこれが後進国の駐在員生活なのだな」と思わせる出来事であった。何しろ日本人にとっては幸せな時代のことである。