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第64話 タイの医療産業(その1)

2019年09月18日 バンコク便り

タイ在住の日本人の殆どは、日本で契約する旅行傷害保険や駐在員保険を利用していると思うが、我々がバンコク市内で診療を受ける大病院の医療費高騰が酷いことになっている様だ。

保険会社の契約先である、外国人対応のシステムや医療設備が完備された大病院はとても頼りになる存在で、日本国内でも珍しいほど高度医療の設備が整っている。また日本人には限らずアラブ語や果てはミャンマー語対応の受付までが設置されており、日本人向けの独立したセンターには日本の医師免許を持つ医師が数人常駐している。その他の科で受信する際には診療の際、必ず通訳が付き添うシステムになっている。確か以前は通訳が必要かどうか聞かれたものだが、最近は依頼しなくとも通訳さんが来てくれるので、私などは医師の言うことを理解していても気を使って通訳さんを通し受け答えしている。時間外の日本語対応については定かではないが病院自体は24時間365日、サイン一つで診療を受けられるという有難い環境である。

この贅沢な立場を許されている我々だが、その医療費は病院側の保険目当て価格で設定され今や法外とも言える状態の様だ。当面この費用は保険会社が負担するにしても当然それは翌年以降の保険料に跳ね返ってくる。

今回、10年ぶりに頸椎症による炎症が発症し一晩激痛に耐え、翌日すぐに診療を受けた。最初の発症時には、痛みも強烈だったが整形外科の診察からリハビリセンター付医師の診察も受け、そこでは首筋に筋弛緩剤の注射をされ、さらに数週間のリハビリ(温熱パック、冷却パック、超音波治療を含む)に通ったものだ。しかし今回はそれほど症状も酷くないと医師が診断したので、簡単な診療の後、薬品と、これは特に希望して首に巻くサポーターを出していただいた。これに対しその医療費は、薬品代B2,900(1万円強)、合計B6,300(2万3千円程)だった。また投薬の上1週間後に再診を受ける様、予約もしてくれた。

しかし帰宅後薬品の内容を確認してみると、筋弛緩剤、炎症止め、副作用を抑えるための胃薬、それに冷却スプレーであった。1週間後も少し痛みが残っていたが、処方された薬品は皆薬局で買えそうなものなので、事務所近くにある薬のホ-ルセラーへ行ってみた。小規模の薬局はここで仕入れて販売するので市価の2~3割は安いのだが、タイの流通は元々規制が無く、ホールセラーでも小売を兼ねている場合が多い。

案の定処方された薬品と全く同種のものを買えたのだが、筋弛緩剤と炎症止め1週間分が何とB320(1,200円程)なのだ。あとの2種を買ったとしてもせいぜい2,000円位だろう。

もちろん大規模な設備投資をし、海外留学組の優秀な医師を揃え(ただし皆数か所の病院を兼務している)、多言語対応の組織を完備した結果ではある。しかも設備投資が巨大化した現在では資本の集約化が進み、所謂高級病院は軒並み買収され医療コングロマリットと化している。そうして寡占化が進めば医療費が高騰することは当然の結果だと云える。

しかし利用者として釈然としないのは事実である。

当然再診の予約はキャンセルさせていただいた。