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第175話 どうなる?ドラフト指名選手の税金

2019年10月31日 所長の眼

毎年恒例行事となっているお馴染みプロ野球のドラフト会議ですが、指名を受けた選手たちの契約金に対する税金はどうなるのでしょうか。今回は目先を変えてその辺りの税金の話題です。

プロ野球選手は個人事業主となります。ですから所得税は事業所得として収入から必要経費を控除して計算した所得金額に応じて負担することになります。もちろん住民税の負担もあります。先日行われたドラフト会議で交渉権を獲得した球団は今後は選手との契約交渉に臨んでいくわけですが、最近では1位指名ともなれば契約金が1億円を超える選手も珍しくありませんし、2位以下でも一時的な契約金はかなりの金額になると思われます。

一方で、所得税は超過累進課税制度が採用されているのはご存知かと思います。所得税率は課税所得が増えれば増えるほど所得税率がアップするという仕組みです。現行の所得税率は課税される所得金額が1,800万円を超え4,000万円以下の部分については40%です。そして4,000万円を超える部分は全て45%の税率が適用され、加えて住民税の税率は10%ですから、あわせて55%の税負担となります。これが高額所得者の方々が「所得の半分が税金」という感覚でとらえていらっしゃる所以です。

先の契約金に対して累進税率をそのまま適用すれば、所得の大半に最高税率が適用され結果的に手取りは半分という図式が見えてきますが、複数年の契約に対する一時金という所得の性質を考えあわせると累進課税の弊害がそこには見えてきます。

契約金のような臨時的な収入やその年によって収入の変動が大きい所得にまで暦年単位で所得の大きさを捉えて超過累進税率を適用することは好ましくないといえます。そこで、これらの所得については年ごとの税負担を平準化させる方法である「平均課税」という計算方法を選択することができます。「臨時所得」や「変動所得」に該当するものが対象になりますが、スポーツ選手などが3年以上の期間特定の者と専属契約を結ぶことにより一時に受ける契約金などで、その金額がその契約による報酬の2年分以上であるものの所得は「臨時所得」となります。

このほかに、漁獲やのりの採取、はまちや真鯛などの養殖、原稿若しくは作曲の報酬、著作権の使用料などによる所得が「変動所得」とされ、こちらも同様の課税方法を選択することができます。

税金計算の仕組みはこうです。例えば臨時所得が5,000万円あるとします。このまま税率を適用すると高い税率による税負担が生じます。そこでこれを5分の1の1,000万円に圧縮して低い税率を適用し、税金はそれを5倍にして納めます。このような方法で累進課税の弊害を回避する仕組みが「平均課税」です。何もスポーツ選手に限定して適用される制度ではありませんから、心当たりのある方は遠慮なくお尋ねください。