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第174話 どうなる?個人財産を法人へ贈与

2019年09月30日 所長の眼

会社のオーナーの方から先々の相続(税)対策について相談を受けることはよくあることです。そしてそのような場合には何をおいても先ずは所有財産の現状把握にもとづく相続税のシミュレーションをしてみることをお勧めしています。具体的にお持ちの財産の把握はもちろんのこと、その評価額としての数値を把握せずに具体的な対策は考えようもありません。ですから相談対策といえばその辺りから始めるのが常です。先日、ある社長に同様の話をしていたときに「私の財産を会社(法人)へ贈与したり相続したりすることはできるの?」と尋ねられました。あえてそう尋ねる社長もあれこれ悩まれているに違いありません。今回はその疑問をそのままテーマとして拝借させていただきました。

先ずは、個人の財産を法人へ贈与したり相続したりすることはできるかということですが、答えはこうです。

  • 贈与はできます。
  • 相続で承継させることはできませんが、遺贈させることはできます。相続というのは、配偶者や子のような法定相続人に財産を移転させることをいいますので、法人に対して相続することはできません。ただし、遺言によって財産を無償で譲る方法があります。相手が親族外の他人や法人・団体であってもこのような方法なら無償で譲ることはできます。

あとは、税金の扱いがどうなるかです。譲る側の個人と譲られる側の法人の立場で整理してみましょう。

  • 譲る個人への課税

譲った側の個人に対しては「資産を法人へ譲渡したものとみなして」譲渡所得が生じます。実際には個人が法人へ無償で譲り渡すわけですが、個人は時価で譲渡を行ったものと扱われます。例えば時価が3,000万円で、取得費が2,000万円であれば、差益1,000万円が所得税計算に取り込まれます。1,000万円の値上がりによる利益が法人に移転するのを機に個人サイドに課税し所得税の精算をするといった理屈です。

この場合に、仮に取得費が3,500万円で500万円の損失となれば、所得税の負担はありません。

  • 譲受ける法人への課税

あらためて説明は不要かもしませんが、時価3,000万円の受増益(益金)となり法人税の負担が生じます。

例えば、たまたま前期にオーナーが退職し役員退職金の支払いが多額に発生しており、それが原因で生じた繰越欠損金が利用できる要件がそろっていれば相殺されます。その結果として法人所得金額がゼロであれば取り敢えず税負担はないということも考えられます。