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第173話 海外での活動とPE認定

2019年08月22日 所長の眼

今回のテーマは一般的には関心が薄いところかもしれませんが、昨今、海外と何らかの取引を行うケースは珍しくなくなってきていますので、あえて取り上げます。本格的に海外現地に子会社を設立する場合であれば様々な専門家の支援を受けることになると思います。税務についても例外ではありませんから用意周到なプランに基づき税務的なリスクを極力回避すべく慎重に対応していきます。しかし、必ずしも現地法人を立ち上げるケースばかりではありません。海外での事業活動の形態は制約を受けながらも様々なものが存在します。

そもそもの考え方ですが、例えば日本の企業が国の内外での事業活動で利益を得ればその利益(全世界所得)に対しては日本の法人税を負担することになります。一方で、海外での事業活動から生じる利益については当然ながら相手国にも課税権があります。アジアの新興国では多くの日系企業が活動しているわけですが、当然ながら、相手国にしてみれば自国での事業活動から生じる利益に対する課税権をみすみす手放すようなことはありません。

各国との租税条約には「PEなければ課税なし」という原則があります。「PE」は“Permanent Establishment”の略で日本語では「恒久的施設」といいますが、事業を行う場所を指します。これは、日本企業が進出先国で獲得する事業利益については、その国が課税することができるのを「恒久的施設」を有する場合に限定しているということです。裏返すと必ずしも現地子会社のような本格的な活動拠点を設けなくても支店や事務所のようなPEがあれば、その場所から生じる事業利益については現地国から課税を受けるということです。

PEに関わる課税関係を整理しておきます。現地子会社を設立するほどではなく支店を設けたような場合は、先に説明したようにその支店は日本の会社のPEとなり、営業活動により得られた利益については、日本のその会社は現地国でも申告の必要があります。この場合に相手国でPE課税を受け、日本の企業がその国で納めた税金を日本の法人税の申告の際に外国税額控除を適用し、国際的な二重課税を解消する手立ては用意されています。

新興国にしてみれば、「PE」の認定は自国の課税権の行使につながりますからその範囲を拡大解釈する傾向はあるようです。経産省の資料(新興国における課税問題の事例と対策)にもありますが一例として、中国では「商業行為を一切しておらず、本社への連絡業務のみ行っている駐在員事務所が、人件費、場所代などの経費に対してみなし利益率を提供され、課税された。」というケースや、インドでは「従業員数が多いことから、実際には営業活動を行っていないにもかかわらず、実質的に営業活動を行っているとみなされ、駐在員事務所がPE認定された。」例などが紹介されています。

厄介なのは、相手国の拡大解釈によるPE認定で負担した外国税額です。租税条約上でのPEに適合しないものであれば、日本での外国税額控除の適用は難しく、結果的に国際的二重課税の問題は残されてしまうからです。