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第171話 支出そのものに課税、使途秘匿金

2019年06月18日 所長の眼

冒頭から余談になりますが、税金の制度について正しくお伝えするには本来の法律用語をふんだんに使ったほうが情報としては正確なものになります。しかし、専門用語を使えば使うほど門外の方にとっては理解し難いものです。面倒な話をどう伝え、いかに理解していただくか、いつも気にかけています。今回は、あまりお馴染みではない「使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例」というテーマを敢て選んでいます。

さて、本題です。例えば「賄賂」「談合金」「秘密政治献金」「総会屋対策費」などは、違法または不当な支出につながりやすいことなどを考えると、本来このような支出は無い方がよいと言えます。今回取り上げた制度は、このような支出を「使途秘匿金」として扱い、その支出を抑制すために税金を使って制裁を科すというものです。

そもそも法人税は法人の利益(所得)に対して課税するという考え方が大前提のはずです。ところがこの「使途秘匿金」については、その法人に課税すべき利益があろうがなかろうが、その支出があれば「その支出そのもの×40%」の税金(プラス重加算税の余地あり)を負担させ制裁を加えるという非常に厳しい取り扱いをします。

この制度が導入された当時は、税制を使ってこのような制裁を加えるのはいかがなものかという議論もあり時限的な制度ということでスタートしました。しかし、その後平成26年度税制改正において適用期限が撤廃され、今日に至っています。この制度が廃止を前提とせず法律として定着することになった理由は、企業の「使途秘匿金」の支出を抑制する一定の効果があるということにほかなりません。

ところで、企業の支出の中には交際費などに紛れて支払先や内容がはっきりしないものが散見されないわけではありません。しかし私の経験の範囲では、この「使途秘匿金」課税が適用されたケースはありませんし、制度の特殊性ゆえか他でも適用されるケースはそう多くはないものと推測しています。それでは、支出そのものについて制裁を受けるのかそうでないのかの分岐点、いわば超えてはいけない一線はいったいどこにあるのでしょうか。

もともと「法人が交際費、機密費、接待費等の名義をもって支出した金銭でその費途が明らかでないものは、損金の額に算入しない」という扱いがあります。こちらは「使途秘匿金」ではなく「費途不明金」などといわれています。例えば領収書はあるけれども使い道がはっきりしないようなものです。説明するまでもなく損金にならないのはご理解いただけると思いますが、この場合でも「秘匿」としての扱いは受けません。(ただし役員賞与として認定される余地は残ります。)

「秘匿」と言うからには、相手先、相手先住所、支出事由などが帳簿に記載されません。渡した相手を知られたくないのですから具体的に記帳されることはないわけです。やむなく支出をし、損金算入できないものとして仮に法人自ら損金算入の自己否認をしたとしても、事と次第によっては「使途秘匿金」課税が待ち受けることになります。

制裁として多額の税負担を課しているにもかかわらず、なおこの制度が存続し続けなければならないところが厄介です。