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第57話 タイ総選挙の行方

2019年02月08日 バンコク便り

予定されている総選挙が(執筆時から)約2か月後に迫り、新たに結成された政党を含む各党のつば競り合いが激しくなっている。

台風の目は新党のひとつ、新軍部政党「パラン・プラチャラート(大衆国家の力の意)」である。表向きはともかく、元より現プラユット首相の肝いりで結成したものであるから、敵対勢力が主張する通り現政権の傀儡であるのは誰の目にも明らかで、軍部を支持する勢力=大衆国家というのは形容矛盾ではないかという気もする。

先ずは首相自身の主導で予め憲法改正が実施され、批判を受けながら「国会議員外から首班指名を行える」という大きな制度変更を盛り込んだ。その後、あらゆる政治活動を禁じ、自らはその間に着々と選挙のための地盤固め、つまり新生党の結成、他党所属政治家の猛烈な勧誘、さらには低所得者への財政援助というバラマキ政策までを行ってきたのだから完璧にアンフェアな戦いだといえる。そしてつい最近になって現首相を新首班候補と明言した。全く筋書き通りに事を運んできたわけだ。逆に言えばそこまで慎重に進めなければ、再度親タクシン勢力に政権を脅かされるのではと恐れた結果でもある。今更タクシン勢力の復活はあり得ないと考えるが、この海外逃亡中の刑事犯罪人は、非選上院議員が新首班指名に参加できるという憲法条項を書き直すなどと主張し、今でも存在をアピールしている。

ウィサヌ副首相は今月初旬、政治活動の解禁発言を行ったが、野党側はこの真意を読み取りきれず、つまり先に副首相は選挙キャンペーンそのものの解禁は1月2日という発言をしているため、年明けを待ってからという判断をしている模様だ。

何はともあれ、予定通り2月24日に投票が実施される。(その後予定は3月24日に延期された)

軍事政権となってからというもの、官僚達が軍人首相を恐れるがあまりに官公庁関連の仕事は常軌を逸したとも云える慎重さで、その点辟易してもいる。しかしかつての様な、現実に死傷者が出る政治混乱が全く無くなったことを思えば、消極的な意味でだが、市民はその功績を認めざるを得ないのではないだろうか。すぐ近くにグレネード弾が撃ち込まれ逃げ惑う市民を見たり、夜中にパラパラという発砲音を聞いたり、考えの及ばない経験をした私の実感である。

(バンコク事務所:小川)