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第55話 オーバーツーリズムによる海洋被害

2018年12月04日 バンコク便り

日本の観光地と同様、タイに於いても海外から押し寄せる観光客によってインバウンド・バブルと言って良い状況となっている。

以前より温暖化によるサンゴの白化や、プラスチックごみによる海洋生物の被害もかなり報告されているが、この「オーバー・ツーリズム」による被害も深刻なことになっている。

この事態に対し、タイ天然資源環境省野生動植物局も昨年5月より、アンダマン海側(マレー半島に続く南タイの西海岸側)の国立公園の一部で、5か月間の一般客入場を禁止した。禁止区域はパンガー県(プーケットの北側)スリン諸島国立公園とシミラン諸島国立公園(ダイビング・エリアとして有名)、クラビ県(プーケットの南に位置する)ランタ諸島国立公園の一部、トラン県(深南部)ジャオマイビーチ国立公園、サトゥン県(同様に深南部)タルタオ国立公園の一部である。

また今年4月からはピピレイ島にあるマヤ湾を9月までの6か月間入域禁止としたが、更なる回復が必要であるとして10月以降も入域禁止を解いていない。とくにピピ島はプーケットから近く、ディカプリオ人気が絶頂の頃に上映された「ビーチ」という映画のロケ地であったためリゾート客が訪れる恰好のスポットとなっている。白砂の美しいビーチとそそり立つ奇岩が絶景だ。今現在は入域禁止外のビーチに1日平均でボート200隻、4,000人が押し寄せるというのだから、サンゴや海洋生物の一部が消えてしまうのも当然だろう。

私がプーケットを何度も訪れていた1980年代後半はこの映画(2000年の公開)以前であり、プーケット自体が観光開発されたばかりであった。今では半分ナイトスポットになってしまったパトンビーチが最初に開かれ有名になりかけた頃だが、当時はどこまで泳いでもホワイトサンドの完璧に透き通った海で、観光客も多くは無かった。観光スポットのメインは上記の「ビーチ」ではなくジェームスボンド・シリーズ「007黄金銃を持つ男」のロケ地、パンガー湾のタプー島。初代ショーン・コネリー時代の作品なので、当然若い方はご存知無い。ピピ島も少しずつ名が知れ始めた時代で、当時は宿泊施設もない無人島であった。

入域禁止を実施したと云えども、もちろんすぐに生態系の回復が望める訳ではない、が効果はある。この4か月で色鮮やかな海が戻ってきたという。ここマヤ湾では閉鎖を解いた後も1日当たりの受け入れ人数を最大2,000人に制限し、湾内にはボートを停泊させずに島の反対側にある浮桟橋に停泊させる、と報じられている。

遅ればせながらタイも、利益重視一辺倒であった時代から、環境保護により観光資源を有効活用する方向に舵を切った、と言えるだろう。