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更新情報

第161話 特例事業承継税制

2018年07月01日 所長の眼

~長期的な税務の視点は欠かせない~

「特例事業承継税制」についてのお話です。皆様のところにも既に各方面から特例制度の情報が届けられているのではないでしょうか。私自身も新たな特例制度は“画期的”と捉えている者の一人ですからお客様への対応に向け早くから準備を進めてきたところです。

制度の概要です。平成30年1月1日から平成39年12月31日までの時限立法ですが、適用要件としては平成30年4月1日から平成35年3月31日までの間に特例承継計画を県知事に提出した中小企業で特例承継会社として認定を受けた会社が対象になります。特例の内容は、先代経営者の自社株を後継者に承継する際に発生する贈与税や相続税の全額を納税猶予し、やがて免除となる筋書きも用意されているというものです。

そして、制度の内容の詳細が徐々に明らかになるにつれ、予め把握しておかなければならない先々の税務面での留意点がいくつかあることがわかってきました。それは主に後継者サイドが把握しておくべき事柄です。「先々」と言っても数年先か、あるいは数十年先になるケースもあるでしょう。それは税理士のような専門家ならいざ知らず、中小企業の後継者自身が把握するにはかなり丁寧な説明を受けなければ到底理解が及ばないものもあります。もちろん税務の専門家としてはこの特例制度を利用する際に納税者が将来遭遇するであろうことが予測できる問題があれば予め説明する責任があるのはもちろんのことです。しかし、説明したからと言って納税者に対して「先々までずっと記憶に留めておいてください。」と言い放ってしまうのも説明する側の論理でしょう。そう考えると、支援する側に対しては、納税者に対して長期的に税務管理サービスを提供できる体制を維持し続けることも求められます。時の担当が変わってもお客様を守り続けるということです。

加えて、老婆心ながらもう一つ気になることがあります。この特例制度を利用する中小企業は5年以内に特例承継計画を策定し知事へ提出しなければなりませんが、その計画書については「認定経営革新等支援機関」の「所見」を記載することになっています。この支援機関として登録されているのは、税理士のような税務の専門家ばかりではありません。計画に対する「所見」というのは税務に関することではありませんから支援機関それぞれの立場からの計画に対する「意見」でよろしいかと思います。しかし、中小企業の先代オーナーや後継者にとって一番大きな関心事は自社株を後継者に承継する際に負担する贈与税や相続税の問題であり、納税猶予にしても出口のところは免除なのか納税なのか、あるいは予測される他のリスクがあるのか無いのかといったところです。計画に対する支援機関の「所見」は計画に対する「意見」であり、それはそれ、税務面でのフォローは別物として切り離して考える納税者は果たして居るのでしょうか。税務に関して長期的なプランと長期的なフォローが必要と知らされればなおのことです。