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第47話 プラウィット副首相兼国防相、追い込まれる

2018年03月07日 バンコク便り

年明けから、副首相に対する圧力が高まっている。その発端は去る1月4日、改造内閣の集合写真撮影の際、照り付ける日差しに思わず手をかざした。その際彼の右手には高級時計ブランド〝リシャール・ミル”(報道によれば1,000万円以上)とダイアモンドをあしらった大きな指輪(同じく1,400万円相当)がはめられており、この写真がSNS上で拡散したことからスキャンダルに発展した。問題とされているのは、国家ナンバー2である彼の公表した資産リストにこのぜいたく品の記載はなく、これまでの報道写真を検証してみると、24種の高級時計を所有しているらしいという点だ。この騒ぎに「国家汚職防止委員会(NACC)」も調査を表明せざるを得ないという事態に発展した。しかも同氏は反汚職を掲げてきた大物なのだ。

NACCはこれらの奢侈品の入手経路を明らかにする様、書簡を送付し、ご本人は報道陣のインタビューで、これらの時計は友人の所有するものだなどと万人が万人信用する筈の無い苦し紛れの発言をしてしまい、さらに火に油を注いでしまった。我々の感覚としてはかなり仰々しいデザインで、買えるはずも無いがいただけないタイプの高級品だ。

これはつい最近(正確には3時間前)クライアントさんからの又聞き情報で確信は無いのだが、軍の管理はその基地ごとにかなりの自由度が許容されており、その結果公表されない収益を、そのまま副収入として関係者で分配しているらしい。どこの国でも軍用地というのは非常に広大で、利用する気になれば利益を得ることは容易い。さらに訓練施設も使用し、製造メーカーが自社製品の耐用性を銃弾を用いて検査したり、軽い話ではコンサートを催したり、この様に工業検査場経営から興行師まで何とも多角経営の軍隊だと思うが、この様なことが法的瑕疵も論ぜられず(一種の治外法権?)個人所得の源泉になっているらしい。であるから施設使用許可も簡便、費用もお安く、他国に比べれば非常に使い勝手の良い施設ということになる。これらを様々な利権の氷山の一角と考えれば、大臣の金満ぶりも納得がいく。長期間にわたり行われてきた習慣なのだとすれば、追及されているご本人にとっては、「言える訳ないだろ。何のために長年勤めてきたと思ってるんだ」ということになる。繰り返すが、あくまで噂レベルからの類推であることを強調しておきたい。

私が赴任したころの民間企業内でも、横領まがいの副収入の話は日常茶飯であった。支出で言えば会社の購入物からサービス料の支払い、収益でも取引先担当者へのコミッション、切削工場ではスクラップ代金等々、もちろん高度成長期であればこその現象とも云えるが、不正が横行していたのは間違いない。またそのテクニックも極めて粗雑なものであったから、周辺の社員は知っていて口を噤んでいるか、感情的に相容れない関係であれば簡単に密告し表沙汰になる。しかもBさんはAさんの不正を密告、CさんはBさんの不正を密告、Cさんが退職した後には「実はCさんが・・」という話を聞く、という訳でふたを開けてみたら全員有罪、というケースもあった。経営者としては笑えない話である。

現在では企業間競争も激しく互いにその様な不正を見逃す収支の余裕も無く、また教育レベルも著しく向上したためか、不正件数はかなり少なくなっている。 官公庁も綱紀粛正というスローガン通り、相当に浄化されているのだが、やはり無くなりはしない、というのが現実の様だ。

*後日談であるが1月25日付報道によれば、上記NACC首脳は「問題の高級時計25個(また一つ明らかになった)がすべて借り物であれば申告の必要はない」と語った。