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第46話 タイ人スタッフの会社観・職業観

2018年02月06日 バンコク便り

最近、クライアントさんのマネージメントの現場に立ち会う機会が多くあったので、ここで現地の方の職場や職務に対する基本的な考え方をまとめてみようと思う。ただしこれらは私の経験から述べることであるから、認識の不足や誤りもあるであろうことを、先ず表明しておく。

まず日本人の感覚と大きく違うのは、考え方のベースがすべて個人優先であり、会社組織の為に尽くそうなどという気はさらさらない、働くのは自分の生活を良くしたいから、職業上の知識やスキルを身に着ける動機も同様である。だから組織の理屈をいくら述べ立てても迷惑だと感じるであろうし、こちらが上司なのだから部下は従うべきという感覚も本質的には通じない。彼らが本気で従おうと考える上司は、困ったときに助けてくれる、解決してくれる、そしてもちろん金銭的にも優遇してくれる、ということが前提となる。

またよく言われていることは、他の社員の前で叱ってはいけない。これは確かであるし、私としては、できるだけアドバイスという形を取り、叱らない様にしている。但し原因が怠惰やごまかしでない場合に限る。もう一つ付け加えるとすれば、どの様な場合にも声を荒げたりはしない方が良い。この社会のある程度以上の階層の人たちにとって大声で怒鳴ったりするのは下品な人、あるいは出自の卑しい人という考え方があり、外国人である我々がこの様な態度を取ると、彼らの自己正当化の材料にされがちだ。

では総じてタイ人スタッフというものは、この様に自分勝手で組織に従わず、叱られればむくれるというだけの困った人たちばかりなのか?

答えは否である。もしそうであればこれ程多くの企業や邦人がこの国で活動している筈はない。彼らの感覚を十分に理解し、彼らの土俵に立ってことを判断できる素地を自ら蓄え、風通しの良い組織を維持すれば、皆良く働いてくれる。いわゆる進出の成功例とされる企業には、まず間違いなくこの様な経営者がおり、従業員が楽しそうに立ち働いている。

またさらに個人的な信頼関係を築けば、こちらの落ち度も十二分にリカバーしてくれる人たちである。

昨今の日本社会の神経質さ、狭量さと比較すればタイの社会は至っておおらかで居心地が良い。この様な眼差しで当地の日系企業の状況を見てしまうと、在外法人を統括する側、つまり親会社のもたらす過剰な緊張感が現地法人に波及し、無用な摩擦を強いている様な気さえする。かつての様に在外邦人立ち上げや経営のプロを招く余裕も各企業には最早無く、昨日今日外国人との共同作業を初めて経験するというのが現在の駐在員さんの状況なのだから、日本側も先ず学ぶ姿勢で事業を展開するくらいの心づもりでいて欲しいものだと思う。現地側の日系企業支援サービスもかなりの数が進出しており、営業以外はほぼ業者任せで行える環境にはなっているが、サービスを提供する側の人材も同じ様に逼迫している側面も見逃せない。当然日々の経営判断を人任せにできるはずもないのだから、そのリスクは常に負っていく以外に道はない。企業である以上、営業成績が最優先であることはもちろん揺るがせにできないが、バックヤードが揺らいでいては結果的に良い業績は上げられない。一度立ち止まって考えてみる時間があっても良いと思う。