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第155話 税制と生産革命

2017年12月20日 所長の眼

このほど与党は“平成30年度税制改正大綱”をまとめましたが、ほぼ時を同じくして政府は“新しい経済政策パッケージ”として国の経済政策の方針を示しています。この12月8日に閣議決定された同パッケージでは、今後の持続的な経済成長に対する最大の壁は「少子高齢化」と位置付け、その壁に立ち向かうためのキーワードとして「人づくり革命」と「生産性革命」を挙げています。「生産性革命」については、『2020年までの3年間を「生産性革命・集中投資期間」として、大胆な税制、予算、規制改革等の施策を総動員する。』と明記されています。

それでは、その「大胆な税制施策」の中身は何なのか。先日公表された税制改正大綱のどの部分とリンクするのでしょうか。

1.中小企業・小規模事業者等の賃上げ環境の整備

上記パッケージにある「賃上げ促進を図る税制として、法人税の負担を軽減する措置を講じる。」との方針を受け、税制改正大綱に登場したと思われるのが「所得拡大促進税新税制の改組」というものです。大綱では中小企業向けと大企業向けとに区分されていますが、ここでは前者の制度を紹介しましょう。

専門用語は避け、わかり易く説明しますが、当期の平均給与の額が前期より1.5%増加していれば全体の増加額の15%分を税額控除できるという内容です。この場合、2.5%以上増加するなどの要件を満たせば税額控除もその増加額の25%(最大で全体税額の2割まで)となるというものです。

2.事業承継の集中支援

同じく「事業承継税制については、将来経営環境の変化にもかかわらず過大な負担が生じうる猶予制度や、深刻な人手不足の中で求められる雇用条件等が、制度の活用を躊躇する要因になっているとの指摘を踏まえ、抜本的な拡充を実現する。」との方針を受け、税制改正大綱では「事業承継税制の特例の創設等」としてその内容が明らかになりましたので、現状の事業承継税制を踏まえてのポイントになりますが簡単に説明します。

  • 納税猶予の対象となる株式は従来の株式総数の3分の2までの上限から、後継者が取得したすべての株式とされました。
  • 贈与・相続いずれの場合の税金も全額が猶予されます。
  • 納税猶予を継続するために、雇用の8割維持という要件が付されていましたが、この要件が大幅に緩和されたため、将来の業績悪化などが納税リスクを招くこともなくなりました。
  • 従来は先代経営者1人から後継者1人への承継が前提となっていましたが、複数人を想定した承継パターンにも対応できるようになります。

3.その他、中小企業・小規模事業者の投資促進の環境の整備として生産性向上のための新たな設備投資に対する後押しとして、固定資産税の減免が行われるなどの改正も盛り込まれています。

蛇足ですが、冒頭記したように経済政策パッケージでは、2020年までを一つの区切りとして様々な課題に対応する姿勢(税制に限らず)を明らかにしています。これに目を通す者の立場により映り方は違えど、これからの世の中の変化はイメージできますので、一読することをお薦めします。