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第42話 治安当局が前首相の逃亡幇助?

2017年10月25日 バンコク便り

去る8月25日、最高裁判決当日までに姿を消した容疑者、インラック・シナワット前首相について、連日報道が飛び交っている。

何しろ、首相であった彼女が国家財政に大きな損失を与えた張本人であるとして「職務怠慢」の罪で起訴され、すでに約350億バーツ(約1,170億円)の賠償命令が発令されているのだ。この重罪を背負った前首相が判決直前に国外逃亡してしまい、最高裁は即日逮捕状を発行し、公判期日は9月27日に延期された。

連日の報道で明らかになってきたのは、判決の2日前であった8月23日、警察の監視下に置かれていたインラック邸に複数の車両が出入りしていた、ということだ。当局は現在、監視カメラの画像分析を行っているとのことだが、分析結果を待つまでもなく、監視していたはずの警察関係者が逃亡幇助を行ったという以外に何か可能性があるのだろうか?息子さんを伴っていたと見られるインラックは、カンボジア経由で、同様に逃亡者である兄タクシン元首相が差し回したプライベート・ジェットに搭乗し、ドバイのタクシン邸へ無事到着している。

報道では、賠償問題で国内に所有していた個人資産の一部を差し押さえられたとしているが、当然のことながらほとんどの資産はとうに国外へ持ち出されているのであろうし、国内にもまだまだ相当額の現金を所持していたと見られ、監視担当の責任者を抱き込むのは容易なことであったと考えられる。

さて、この結果に対する国民の反応だが、民間研究所の調査によれば、「政争が沈静化する可能性が高くなる」「現政権によるコントロールが容易になる」と考える国民が8割以上を占めている、とのこと。ネガティヴな意見としては「政治不信」「ダブルスタンダード」「民主主義でないことの証明」との反応も見られた。

タイの国民性として、争いごとを嫌う、白黒はともかく平静を望むという一面がやはり大勢を占める、のは当然のことであろうが、これで本当に長期間繰り返されている政争が沈静化あるいは収束するのだろうか?

この期に及んでも政争を画策し指示を行っている張本人であるタクシン・シナワットは健在であり、莫大な財産を蓄えているのである。親タクシン派に対してはオンライン会議で直接指示が与えられ、積極的に彼の手駒であろうとする政治家が多数存在し、また東北部農村の大票田が揺らぐ訳でもない。これもまた最近の民間調査だが、歴代首相中、人気トップはタクシン、という結果が出ている。すべては来年に行われる総選挙で明らかになるのだろう。