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第129話 周りに海外赴任者の方は居ませんか?

2015年11月30日 所長の眼

最近では海外の関連会社に勤務を命ぜられることも珍しい事ではありませんね。この場合、1年以上の予定で海外赴任するようなケースではその赴任者は税務上は「非居住者」となります。そして非居住者が海外で働いて得た給与などについては日本国内で発生した所得ではありませんから赴任先国での課税は受けますが、日本の所得税負担はありません。しかし、日本国内で発生した所得があれば日本で確定申告しなければなりません。例えばもともとアパートを賃貸していたとか、あるいは海外赴任にともない空き家となる自宅を賃貸するといったケースが該当します。しかし、海外から申告することは容易なことではありませんから本人に変わって申告してくれる「納税管理人」を定めることになります。通常は身内の子供や親を選任することが多いと思われますが税理士や法人を選任し届出ることもできます。

ここまでは海外に出る人についての話。「私とは無縁」と感じた方でも、貴方が普段賃借している不動産物件の家主さんは実は海外で生活しているようなケースはあるかもしれません。家主さんの預金口座に毎月家賃を振り込んではいるがその本人がどこに住んでいるかまでは確認するどころか気にもしていないという人は多いのではないでしょうか。家主さんが海外に住んでいたら、家賃を払い込んでいるあなたは源泉徴収しなければならない人、つまり源泉徴収義務者である可能性があります。家賃を振り込む際に20.42%の税率で税金を徴収し税務署に納めなければならないということです。(この場合でも居住用での賃借であればその必要がない場合もあります。)

「実際に海外に住んで非居住者とされる人は日本には居ないわけですが、自らあるいは代理人を通じて確定申告してくれれば問題はありません。しかし申告漏れがあったときは困ります。(省略)そこで確実に税金を徴収する仕組みとして、国内において所得を支払う者に対して源泉徴収義務を定めています。非居住者に対して所得の支払をする者は税金を天引し税務署へ納めることになっています。天引する者は法人・個人を問いません。」と以前の記事で紹介させていただいたことがあります。

それでは、非居住者から国内の不動産を購入したらどうなるのでしょうか?この場合には譲渡対価を支払う際に天引すべき源泉徴収税率は10.21%です。具体的に考えてみましょう。不動産の購入価額が仮に3,000万円とすると相手に対して支払うのは26,937,000円で、3,063,000円の源泉徴収分はいったん預り税務署に納めなければなりません。仮にこの源泉徴収を怠り、3,000万円の全額を相手方に振り込んでしまったらどうなるでしょう。法律上「源泉徴収をしなければならない。」のに、しなかったことになります。後に税務署から指摘を受けた場合には、不動産を売却した本人あるいは本人の納税管理人が申告していたかどうかにかかわりなく、納め忘れた源泉徴収税額に延滞税などを加算してあなたが納めることになります。もちろん払い過ぎた分は相手方に請求すればよいのですが、納税管理人は確定申告書の提出、税務署長などからの書類の受領、税金の納税や還付金の受領などをするのが本来の役目ですし、請求相手である本人は海外にいますから事は厄介です。海の向こう側にいる人に「納税すべき本人と源泉徴収義務者との関係」を理解してもらったうえで、立替えた大金を返してもらうわけですから。