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第14話 タイの電力事情

2015年05月19日 バンコク便り

タイの暦では正月三が日が明けた日、が今現在(但し原稿作成日、4月16日)であり、その三が日は「水かけ祭り」と呼ばれ全国的に庶民は水を掛け合って今年一年の互いの幸福を祈るという意味がある。かつては目上の人に対しては後ろから首筋に少し水をかけ、合掌とともに「あなたが一年間幸福でありますように」という言葉をかける、受けた者もお礼の言葉を返す、如何にも東南アジアらしく奥ゆかしい行事であった。ところが昨今はゴーストバスターズばりのタンク式大型水鉄砲で今日ばかりは無礼講と、遠慮会釈も無い水かけ戦争ごっこと化している。若者は昼から酒に酔い踊り狂い、そこに祭りの意味も理解しない欧米人観光客も参戦、更にあろうことか警察までが水かけエリアを交通規制で確保するという、全国を上げてのばか騒ぎ、欲求不満解消スペシャル・デーである。同様の記事を以前、当地の日本語新聞に寄稿したことがあるのだが、恐らく体制批判と見做されかねないということで掲載されなかった。それはいい。

先週7日当地の日本語新聞(NEWS CLIP)に「1日あたりの電力消費量、記録を更新」という記事が記載された。この季節は酷暑期のピークに当たり、当然エアコン使用が大きく影響している。当日のバンコク最高気温36.3度、40度を超えたエリアもある。(昨今の温暖化で、日本でも驚く数値ではないが)この日の電力消費量は2万7,056.8MWであった。

これをきっかけにタイの電力事情を少し調べてみたのだが、電力を生むエネルギーの72.1%を天然ガスに頼っている。これは国内で産出するエネルギー(但しその内3割はミャンマーより輸入)であるから当然であろう。次いで石炭・褐炭が18.2%、石油は僅か0.3%に過ぎない。あとの約10%は水力、再生可能エネルギーおよび輸入電力、となる。(2010年、エネルギー省のデータによる)

この様な現状から、この国においてもエネルギーの多様化(輸入依存度低下)、環境対策に対するエネルギー政策展開を積極的に進めている。方向としては再生可能エネルギー、クリーンコール・エネルギー(技術革新による低炭素化化石燃料発電)、バイオマス、小規模水力が挙げられている。原子力は2011年において計画を凍結した。

再生可能エネルギーについては、依然安定供給面、コスト面について改善を要求されるものであるが、2021年において全電力消費量の約25%まで引き上げる計画だ。メインの目的以外にも①遠隔地農村住民の発電・燃料生産への参加②政府の発電・送電コストの軽減を謳っている。

目標を達成するため、1992年省エネルギー促進法(2007年に修正)を定め、エネルギー効率・再生可能エネルギー・プロジェクトに対する財政支援、促進プログラムと「省エネルギー促進基金(ENCON基金)」により、関連プロジェクトや研究開発などを支援、また電力購入規則により、民間の小規模発電事業者(SPP)・極小規模発電事業者(VSPP)が再生可能エネルギーを利用し送電網に接続することを許可した。

現実に、上記の財政支援を受けた下記事業が稼働している。

1ミトポン(代表的砂糖メーカー)のバイオマス発電所:原料は主にバガス(砂糖黍の搾汁後残滓)、容量65MW。

2太陽光発電所34か所、204MW(2012年)、その他48MWのプラントおよび73MWのプラントが完成(2013年)

3EGAT(電力公社)が風力タービン(1.25MW)を2基(2009年)。ウィンド・エナジー・ホールディングスが207MWの風力タービンを2基(2012年)。

元より電力の既得権益による圧力などは存在しない為、政府の支援に応じ様々な形の計画が順調に進んでいる様に見える。またクリーンコール・エネルギーに関しては日本との技術連携が大いに期待されるのではないだろうか。