TEL:0120-799-099 受付時間:8:50~17:00 お問い合わせはこちら

更新情報

第159話 医療法人の持分 その1

2018年05月10日 所長の眼

株式会社などの株式を後継者に引き継ぐ際の相続税や贈与税負担の軽減を目的とした特例事業承継税制についてはすでにご紹介しましたが、一方で医療法人についてはどのように扱われるのか次回を含め2回に分けて取り上げます。

言わずもがな株式会社は営利を目的とする法人で、得た利益は株主に配当され、最終的に会社が解散するのであれば、残った財産は株主の持分に応じて分配されることになります。個人の株主であればその分配も配当所得として税金の対象となります。

では、医療法人はどうでしょうか。「営利法人か?」といわれれば、「いいえ、非営利法人。」です。そのため医療法人は出資者に配当することは医療法により禁止されているのです。しかし、解散したときの持分の払戻しの取り扱いについては一元化されていません。平成19年4月以降設立された法人については「持分」はないものとして設立されていますので払戻しはできず、株式会社とは一線を画しています。しかし、旧法で設立されたほとんどの法人については持分を出資者に払戻すことを定めた定款を備えており、その数およそ4万法人と公表されています。

そこで厚労省では医療法人の非営利法人としての位置づけを明確にすべく旧法で設立された法人の持分なし法人への移行を促しているところではあります。その移行は定款変更手続きで済みますので作業的には難しいことではありません。しかしながら、同省の思惑通りに移行が進んでいるわけではありません。それもそのはず、定款変更のためには出資者に財産ともいえる持分の放棄を宣言してもらわなければならず、手続きほど容易な話ではないのです。移行が進まないのも無理からぬこと。加えてもう一つの理由があります。仮に持分放棄を決断しても、税務上の取り扱いとしては放棄を受けた医療法人を個人とみなして贈与税を課税する仕組みがあるのです。(理解し難いところですが説明は省略します。)出資者の財産放棄と法人の税負担という二重の壁が存在します。

株式会社の自社株の場合も財産価値があるが故に後継者に承継する際の相続税や贈与税の負担という悩ましい問題がありましたが、この4月からの特例事業承継税制により税負担なしで後継者が自社株を引き継げる道が開けたのはご存知の通り。医療法人の出資者にとっても持分の払戻しが可能な出資については、その財産価値に着目して相続税や贈与税が課税されますので、後継者への医業承継についても株式会社同様の悩ましい問題を抱えることになります。

厚労省の意向に沿って出資者が持分を放棄するのでれば、出資の価値もゼロになるので後継者側の税負担問題は一気に解決。さて残る法人が抱える税負担は?(次回へ)