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第40話 タイ語について

2017年08月22日 バンコク便り

本題に入る前に、前回のバンコク便「バンコク都 順次屋台を廃止」について続報がある。

4月24~25日付報道によれば、屋台事業者側から「この政策が実施されれば数千人の市民が路頭に迷う」との抗議が上がり、都庁側もカオサン通り、華人街のヤオワラート通りなど特に屋台が集中している地域については取り締まり地域から除外する、との緩和策を発表したという。当然の結果である。その後報道が無いことから、おそらく都庁の勇み足ということで実質はほぼ何も変わらないのであろうかと思う。

さて、タイ語についてだが、外国人が学び会話や読み書きをするには結構ハードルの高い言葉だと思う。先ずは声調。低声、中声、高声の他に高声から下りてくる、低声から上がる5声調である。私が30数年前に初めて使用した教則本には、声調を理解するための例文があった。

マーイ(高声 木)マイ(低声 新しい)マイ(中声 ~しない)マイ(高から低 燃える)

これで「新しい木は燃えない」という意味の文章になる。

ただし初心者が声調に拘っていると先へ進まなくなるので、これは会話にトライしながら相手の真似をして覚えていった方が良い。会話が通じない時に何度も訂正されるのがマスターへの早道だ。これは私見だが、歌の上手い人、つまり音程の正確な人は一般的にタイ語会話の習得が早いと思う。

また話し手(つまり身分あるいは教育レベル)、聞き手との上下関係、状況により言葉遣いが全く異なるのも厄介な点だ。基本的な言葉「食べる」は一般的に「キン」だが、多少改まった関係での会話の場合「ターン」になる。例えば高学歴の社員に対し、面接から雇用したての時期までは意識して「ターン」と言い、気心が知れてくれば「キン」に変わって来る。さらに書類や本に記載される文語も全く異なる。投げるの「ヨーン」は「パー」、着るの「サイ」は「スワム」である。何ともややこしい。また僧だけが使用する僧語、王族が使用する王語もある。

また読み書きで判読し難いのは外来語で、何だか読めない単語があるなと思うと、外来語のタイ語表記であることが多い。現代ではタイ語全体の2/3を占めるという。ただしこれは、そもそもタイ語の成立に近隣国の言語が影響しているという事情がある。そしてタイ語の記載には分かち書きが無い。どこからどこまでが一つの単語なのかが示されていないと、困難度はかなり高くなる。日本語の句読点を抜きひらがなのみの表記で単語を繋げたらどうなるか、どうか想像していただきたい。にほんごのくとうてんをぬきひらがなのみのひょうきでたんごをつなげたらどうなるか、という具合になる。

どの言語も同様だろうが、言葉は時代により変化してゆく。ある時点で初めて聞いた言葉が、バーッといっぺんに広まる感覚である。外来語が定着してしまい、タイ語にとって代わるケースもある。例えば銀行は「タナカーン」で、もちろんこの言葉を知らないタイ人はいないし、正式な銀行名は「タナカーンXXX」だが、会話ではほぼ全員が「バンク」と呼ぶ。タイ語の殆どは2音節までの短い単語であるため、「バンク」の方が呼びやすいということもあるだろう。

以前ビジネスでお付き合いのあった、タイへ移住してきたインド人の青年と話していて、妙に会話がしっくりくるなと感じた。よく考えてみると、その青年も私もタイ語教則本で学んだタイ語であったため、その様な時代の変化に対応していない純正のタイ語で会話をしていたからだと気づいた。もちろん全言語的に、ネイティブスピーカーとの会話が一番難解だというのは周知のことである。