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第37話 第20代大僧正を任命

2017年05月09日 バンコク便り

ワチラロンコン国王陛下が2月7日付、4年の間空席となっていたタイ仏教界の頂点、大僧正に齢89歳のソムデット・プラ・マハー・ムニーウォン僧を任命したと報道されている。

国民の殆どが敬虔な仏教徒であって、毎早朝托鉢僧に食物を寄進し、仏教関連の祭日には欠かさず寺院でのタンブン(徳を積むの意)というお参りをする人は今も珍しくない。そして男性が大人になるための義務として短期間の僧修行を行うことは特に珍しくもない。かつては7月の入安吾(カオパンサー)から10月の出安吾(オークパンサー)までの3か月が僧修行の期間とされていたが、さすがに現代社会には相応しくない様で修業期間は短縮され、祝祭日として暦に記されている。私の友人である直木賞作家の笹倉明先生は、北タイの寺院にて出家し1年ほどになるが、僧侶としての生活がお気に召したらしく、還俗するという便りは一向にない。しかし一方、ここ10年においては、著名な僧にマネーロンダリングの疑惑がかかったり、高級車どころか自家用飛行機まで所有し、有名人にランボルギーニをプレゼントする、と云う様ないわゆる破戒僧も登場してきた(この方は現在横領犯として捜索を受けている)。この4年間の空白も、推挙された僧正の兄弟弟子がその破戒僧張本人であったため、任命が差し止めとなっていたのがその原因と言われている。

これまでの任命制度は、タイ仏教界の最高意思決定機関であるサンガ最高評議会が大僧正を選出し、首相が国王陛下へ上奏するという手順であったのだが、政府が関与すれば政治関連案件ともなり兼ねないので、今回は現プラユット首相自ら主導権を執り、国王陛下が前記最高評議会の高僧から直接選出する形に移行したものである。やはり聖と俗のボーダーライン問題は、大宗教に付きものの様である。

大僧正に選ばれたマハー・ムニーウォン僧は評議会中で2番目の高齢。タイ西部ラチャブリ県に生まれ、タマ ユット派に所属している。インドのバラナシ・ ヒンドゥー大学にて考古学 の修士号を取得した。私も一度だけその大学のキャンパスを訪れたことがあるが、大河ガンジスのほとりにあり、静謐で大きな敷地内にあってヒンドゥー教関連の由緒ある博物館も併設されている。私自身は無宗教な人間なのだが、宗教美術を鑑賞したりインドの各地方にある大寺院を相当数訪れ、寺院やそこで祈る人たち、それは巡礼者やサドゥーと呼ばれる聖者であったりもするのだが、彼らを眺め、信仰について思索を巡らせるのが趣味という変わった人種でもある。南インドで、異教徒入域禁止のヒンドゥー寺院に知らずに入り込み追い出されたり、バラナシのガンジス河岸で信仰の儀式を行うサドゥーの傍らで、そのふるまいをただ眺めて悦に入っていた経験もある。仏や神の偶像を崇拝するだけではなく、大河や海で体を清め、日の出や日没時の太陽を一斉に崇める。その様な行為を目の当たりにすると、その幸福感はいかばかりかと、無性に羨ましいと感じるのである。

インド最南端、クマリ・アンマン寺院のある海岸には、インド各地からの巡礼者が絶えない。

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