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第146話 相続税の税務調査

2017年03月21日 所長の眼

平成27年から相続税の基礎控除額が引き下げられたことに伴い、当事務所でも相続税の申告の相談を受けることが多くなりました。そこで今回は「相続税の税務調査」について取上げます。会社の経営者であれば一般的な所得税や法人税の税務調査については経験済みの方が多いと思います。しかし、相続税となれば話は別。一生のうちに何度も経験するものではありませんし、申告所得の誤りではなく申告財産に誤りがないかを調査することになるのですから、会社に対するそれとはだいぶ趣が異なります。

まず、相続税の税務調査には背景となる法律により二つの種類があります。ひとつは国税犯則取締法に基づく“強制調査”いわゆる国税局によるマルサといわれるもの。もうひとつは国税通則法に基づく“任意調査”といわれるものです。このうち“強制調査”については幸いなことに私は経験がありませんのでノーコメントです。ご興味がある方は映画「マルサの女」などいかがでしょうか。ということで今回は相続税の“任意調査”についてのお話です。

相続税の税務調査に立ち会った経験として言えることですが、亡くなられた被相続人だけではなくご遺族の方々の預金の残高や普通預金の過去の出し入れなどのデータは調査に着手する前に予め調査官が入手していることがほとんどです。税務署では相続税の税務調査をする準備段階で銀行や証券会社などに照会文書を出し、予め資料を入手することができるのです。この辺りは通常の法人税などの調査とは異なるところです。したがって私たちも相続税の申告の依頼をうけた時は、納税者が後々加算税などの余分な税金を負担することのないようできるだけ生前の預金の動きなども把握し正確な申告を心掛けます。

大変残念なことですが、周囲の方の無責任なアドバイスのせいなのか、亡くなられる直前にご家族の方がキャッシュカードを利用して被相続人の口座からまとまった金額を引き出してしまうケースが散見されます。入院費の支払や葬儀などの準備のためならまだしも、税金対策になると考えるのは全くの誤解、大ケガのもとです。上述のとおり調査官は調査の準備の段階ですでにそのような状況は把握しています。もちろん引出した金額を手許現金として申告財産に含めていれば問題のないことなのですが・・・。

次に、相続財産の申告漏れで最も多いと言われているのが“名義預金”と言われるものです。実際には被相続人の管理下にありながら配偶者や子供・孫の名義として残されているものです。これは単に名義を借りただけの被相続人の財産です。ただし、あくまで申告すべきは“名義預金”であり、生前にしっかりと贈与を受けていたご遺族名義の預金であれば話は別。例えば、普段から申告所得がなかった専業主婦の方でも生前贈与を受けて財産を形成してきたことが証明できれば“名義預金”呼ばわりされずに済みます。

余談ですが、税務調査でよくある話。いきなり調査官に「奥様は旦那さまから生前贈与を受けましたか?」と質問されと反射的に「いえいえ、貰ってません。」と返してしまう場面、よく出くわします。堂々と「はい、毎年貰ってました。」とは言いにくいものですね。

では、民法による贈与成立の考え方を確認しましょう。『贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾することによって、その効力を生ずる。』とあります。あたりまえのことですが、「贈与します」「貰います」の互いの意思表示が肝心なのです。子や孫に言わずに“伏せておく”では贈与は成立しません。更に大切なのがそれが“いつ”であったかということです。めんどうでもその都度贈与契約書をご用意いただき署名のうえ保管されることをおすすめします。その際、未成年者が受ける贈与であれば代理として親権者が署名すべきことも覚えておいてください。

何事も本番では過去からの正しい対応の積み重ねがものをいいます。