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第34話 国王陛下崩御 その後

2017年02月07日 バンコク便り

報じられている通り11月13日午後、タイ国王プミポン・アドゥンヤデート陛下が崩御された。ご崩御翌日は服喪に伏すとして政府関係機関はすべて休日となったが、その後どの様な事態になってしまうのかと心配していた我々の予想に反し、ビジネスや市民の生活には全く支障がなく、一般国民の服喪期間とされていた1か月が過ぎた。その期間、つまり先週末まで市民の服装はほぼすべて黒一色であったが、今現在はほぼ半数といったところだ。

政府はパーティーや展示会等のイベント自粛、そして購買欲の低下による経済の停滞を慮り、服喪明け当日と重なった「ローイクラトン(精霊流し)」を迎えるにあたり、各知事宛て「娯楽活動を認める」という異例の通達を発している。中進国の罠と言われる〝人件費高騰″〝人手不足″〝少子高齢化″を迎えている状況を認識したと思われるこの様な政策配慮が、最早国体の根幹に関わる事態を迎えてもなお揺るがない、正に発展途上国を脱したという現実を見せられた思いだ。

ここ数年繰り返されている政争を、実際にはポピュリズムと選挙票の買収であったにしても、100歩譲って「近代化に於けるエスタブリッシュメント層への挑戦」と考えたとしよう。その様な歴史上の転換期には、行き過ぎがあれば必ずバックラッシュが起こるものである。未だこの国家はこの政争を解消するに至っていないが、次々と訪れるそれぞれの場面での意思決定は、非常に冷静で足腰の強固な体制であることを感じさせるに十分なものである。

去る8月7日、国民投票により賛否両論のあった新憲法草案が承認され、国王陛下の承認を待つというタイミングでこのような事態を迎え、現在新国王の即位を待ち憲法承認を得なければならない、という微妙な状態にある。草案は90日以内に承認され、その後60日以内に「国家評議会(NLD)」による関連法の審議を終了させる必要がある。NLDとしては焦燥感を抱いている様だが、草案自体に関しては事実上敵対勢力も支持しているのであるから、問題なく進展するであろう。

現政権の次のハードルは間違いなく、2017年6月に予定されている総選挙となる。票の買収を阻止する手立てを未だ持てぬ現政権側は、改めて防戦側に立つ運命にある。その予防策として、新憲法により政府首班(つまり首相)の選出を与党以外から行うことが出来るという道を開いた訳だが、制度上は民主主義の根幹たる選挙の結果をゆがめる形での首相選出をどう強行しようと考えているのか、たとえ選挙の実態が民主的で無いというのが現実であっても、かなりの困難が予想される。一方反政権側(所謂親タクシン派)も、過去の政変騒動の過程で一線級、二線級の政治家の殆どが日本で云う公 民権停止状態であり、さらに傀儡政権を託された実妹インラック・シンナワットは現政権から、首相時代の職務怠慢により国家財政に大きな損失を与えた罪により357億バーツの損害賠償命令を受けすでに政治家としては死に体である。

結果がどちらに転ぼうが、ビジネスに大きな損害を及ぼす様な騒乱だけは避けて欲しいというのが、特に都市圏市民の願いではなかろうか。