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第29話 縦割りタイ行政の弊害

2016年09月23日 バンコク便り

本日8月30日付日経新聞上にて「税の算定法 揺れる、50社以上 追加で納税へ」と報じられた。それがマスコミの商売とはいえ、何かスクープめいた論調になっていることに苦笑した。問題とされていたその算出というのは複数のBOIプロジェクトおよびNON-BOI事業(課税対象)を行っている場合の税算出方法である。

「税計算に於けるBOI(投資委員会)と歳入省(税務署)の見解の相違」は10数年前から話題になっており、本年6月であったろうか、歳入省の追徴金5億バーツに対して2008年からミネベアが提訴していた訴訟に対し、ついに最高裁判決が下ったという内容だ。誰の予想かはあずかり知らぬがこの記事では、〝大方の予想に反し″歳入省勝訴となり〝日系企業に大きな不安が広がっている″らしい。しかし日経はそもそもBOIと一般省庁の関係を認識できていない。タイにおけるすべての法人は、各管轄省庁、関連法に縛られるのが大前提であり、海外からの直接投資を呼び込むための云わば営業を目的とした機関であるBOIは、その目的を達成するために、「投資奨励法」で定めたほんの一部の条件を各省庁に減免していただく〝委員会″であって、制度を定める権限を有していない。であるから実務上も我々は、当たり前と考え歳入省見解に従い決算申告業務を行ってきた。さらに言えばこの判決の件、2か月以上前に聞いており、何を今更と感じてもいる。すでに歳入省は対象となる企業に対し、本年6月15日より8月31日の期間に修正申告を行えば、罰則金・延滞金を免除するという省令を発している。

もちろん関連する省庁どうしで見解が大きく相違しているのは縦割行政の弊害であって、企業はその被害者である。しかし、この国に長く関わってしまうとその様なことは正に日常茶飯事であって、驚かないことが逆に批判の対象にされ兼ねないという不安を感じる位である。何しろ、定められた書類をきっちり揃え、手順通り登記関連、許認可関連の業務を行っても、すでに申請受理された手続きについて他省庁の出先が「それは誤りだ」と主張し突き返してくるお国柄である。縦割りの話ではないが更にひどい例がある。毎年農閑期(1~3月)に行われてきた政治騒乱がピークに達しいよいよデモ側がエスカレートし銃撃やら放火までやらかし、一時業務も休止せざるを得なかった2014年5月のことである。デモ隊占拠地域にあったクライアントの従業員が流れ弾に当たり即死した。その様な状況下、歳入省は「被害地域に関わる企業の確定申告期限を延期する」という公告を発し、まさに決算申告作業のピークに差しかかり、軍のバリケードに囲まれていた地区で業務を行い、生活もしていた我々は安堵した。しかしその10日後、つまり確定申告期限の年間ピーク(5月末)を迎える5日前、歳入省は新たな公告を発し「確定申告期限延期が許可されるのは、政府が指定した直接被害地に限られる」とされた。弊社の所在地は、騒乱地域からは数キロ離れているが軍のバリケード内にあって、実際生活地域の中でグレネード弾が着弾し人々の逃げ惑う姿も見ているのである。この状況で急遽、大至急の決算申告作業を強いられることになった。もう腹を立てる余裕も無く、心中では「そんなご無体な~」と思いながら業務をクリアするしか無かった。追徴税を支払う企業は気の毒だが、監査法人側がミスリードしていたにしろおそらく監査同意書にはしっかりと、監査の結果を判断し申告するのは企業経営陣の意思によるものという意味のことは記載されているであろう。