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第25話 タイ社会の持つ包摂性について

2016年05月11日 バンコク便り

下世話な話だが、タイは美人の多い国である。但し振り返りたくなる様な美人を見たら、先ず気を付けるべきことがある。それは何か?

先ず手足の大きさを見る。骨格(主には肩幅)を確認する。この確認を怠って異性としての興味を持ってしまうと、大きい割合で落胆することになるのでご注意願いたい。あるレベル以上の、しかもはっきりした顔立ちの美形の方は、生物学的には男性であることが非常に多いのである。何しろ100%の努力で創り上げた美貌なのだから、生を受けた時から自然に持っているという油断のある女性には決して太刀打ちできないものがある。

レベルの高い方が多いことは即ち裾野が広いこと、つまり圧倒的な数の女装の人たちがいる。レスビアンの人たちも同様であるし、その生きる姿勢もオープンでおおらかである。男子高校生(DK??)ですでに派手目なメイクをしている子も見かけるし、サービス業では一定割合をゲイの人たちが占めており、また高名な医師もいる。

しかし日米やその他先進国の様に、人権侵害を訴えるという例はほとんど聞かない。元よりこの国の人々は個人主義や個人の自由を第一に尊重するので、性愛傾向が違ったからと云って差別を受けることが非常に稀だから、隠す必要がそもそも無い。私自身、公私を問わずご縁がある訳だが、友人どうしでたまに茶化されることはあっても、色眼鏡で見る、という言動は全く目にしない。

もし興味のある方は、サイアム・パラゴンという最高級デパートに足を運んでみると良い。階下の化粧品フロアで働く店員さんの、恐らく3割くらいは女装の人たちである。これはタイ女性が、彼らの美を求める真摯な姿勢を認めている、という証左ではないのか。

日本で話題になった同性どうしの婚姻は、元々庶民の間では法律上の婚姻に拘らない習慣から、これも大きく取り上げられることがない。病院での面会を拒否される様な民間レベルの問題も、これは想像の域を出ないが、病院側に一言説明をすればすんなり受け入れられるのでは無いだろうか?

この国で勤務されている数万人の日本人駐在員の方々も、おそらくここで述べた様なことに象徴される、(あくまで「象徴される」である。直接的に同性愛者が多いから住みたい、という例は除く)この国の人たちの大らかさ、言い換えればタイ社会の持つ包摂性に一種の安らぎを感じ、「タイに住み続けたい」と思っている方が多く、帰任後に転職してまでも再びタイで働くという例はよくある。もちろん100%心地良いばかりではなく、逆にこちらも常に大らかな態度を求められるというプレッシャーを感じ、まさにそのことが一面、我々の病弊なのかも知れないと自問自答してみたりもする。

街は発展し肥大化、都市化が進み、便利さと引き換えに失ってゆく、云わば「タイの心」という様なものを目の当たりにしながらも、やはり信仰心を基盤とした健全な包摂性をこの社会が失っていないということだろうと、半生をこの地で過ごしながら、依然部外者である私も考えることがある。