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第23話 多国籍面談

2016年03月20日 バンコク便り

<このお話の登場人物>

BOI投資促進官   氏 D社社長       E氏
BOI  〃     B氏 D社マネージャー   F氏
KOTRAD社担当職員 C氏

A氏「こんにちわ。では御社の会社について、またタイで製造を行う製品と工程について説明してください」(タイ語)→ 私がF氏に通訳(日本語)→F氏がE氏に通訳(韓国語)、そして日本語→タイ語と返ってくる。

ここはタイ国投資委員会(BOI)の面談会場である。ここ数年、BOI関連の業務は社員に任せきりでいたため、私が現場に立ち会うのは久しぶりのこと。縁あって今回、韓国企業D社の官公庁手続き、工場物件の手配等々、すべて委ねられることになった。元よりD社は取引先の多くが日系企業であり、大阪にも支社を持っており、日本人との付き合いが長きに亘った結果、ありがたいことにE社長は日系企業や日本人の仕事ぶりに惚れ込んだ方なのである。さらにF氏は韓国の外交官の息子さんで、学齢期の長期間を日本で過ごし、日本語、英語も堪能な頼もしい若者だ。

まず事業立ち上げの第一歩としてBOIの投資奨励事業認可申請を開始、先月申請受理された。多忙の中私も時間の浪費は許されず、これまでの経験を以て予想される担当官の疑問点を全て網羅した申請書を作成し、一発通過した。

しかしこれまでの経験と云っても進出企業サポートは99%日系企業に対するものであり、過去に一例だけ中国企業の申請を行ったことがあるが、韓国系企業というのは初めての経験である。

インタビューは続き、タイ語→日本語→韓国語→日本語→タイ語の通訳合戦に時折英語が挟まり、私の言語変換チューニングも一杯一杯の状態である。担当官A氏は、生産に使用する薬剤や工程について根掘り葉掘り聞いてくる。彼女の役割は同社の生産詳細について理解し、それを審査委員会で報告することなのであるから全く悪気は無く、当然のこととして質問しているのだが、質問されるE社長は、「私が今まで研究や試作を重ね開発したノウハウを全部オープンにしなければならないのか?」と憤慨する場面もあり、そこは私が「もちろん明らかにできる範囲で結構ですし、素人に理解し易い様、アレンジして話してください」と取り持った。化学系企業にとってはそこが正にメシの種であるのだから当然だ。さらに圧巻であったのは、5つの工程ではそれぞれ必要な薬剤を添加し、それぞれに適した機械設備で化学変化を起こさせるのだが、素人目にはどの工程も薬剤を撹拌している様にしか見えない。A氏は、「それなら最初から全部の薬剤を入れて混ぜた方が早いんじゃないんですか?」と爆弾発言。一同ドッチラケである。どこの世界に一工程で済むものをわざわざ五工程に分けて製造する工場があるのか、考えて欲しい。

そこではさすがにA氏も雰囲気を察して発言を取り下げたが、危うい場面であった。

そして2時間に及ぶ面談は無事に終わり、後は審査委員会の通過を待つのみである。しかし実際にはこれから工場物件の契約、法人設立登記、工業省操業許可が控えており、これから操業まで早くとも4~5か月の道のりだろう。上記KOTRAとは、日本で云うJETROの様な韓国政府の支援団体で、その担当者までがわざわざ面談に立ち会ってくれた。がしかし、最後にA氏がこれからの流れについて説明してくれた一部分を、「なんて言ってました?」とC氏が私に聞いてきた。おいおい、タイ語からタイ語の解説を日本人にさせないでって。