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第91話 経営承継
01st 2月 2012
創業者は裸一貫で事業を興し、失敗や成功など一つ一つの経験を幾重にも積み重ねながら会社を成長させてきたわけです。その創業者の「想い」を後継者にどう伝えるかということは大変に厄介な問題です。例えば創業から50年を超える企業であれば戦後間もない裕福でない時代に会社を立ち上げたことになります。今とはだいぶ時代背景が違います。また、取引先の倒産で窮地に追い込まれ資金繰りのために銀行に頭を下げたなどの苦い経験があれば、創業者は後継者に同じ過ちを繰り返してほしくないと考えるはずです。しかし、創業者が当時の苦労話を後継者に伝えようとしてもなかなか思い通りにいきません。所詮創業者の「想い」を後継者のそれに重ね合わせようとしても不可能な話です。創業者が生き抜いた時代背景と後継者が育った環境はそもそも同じではなく、それぞれの「想い」を形作る土台が違うのです。かといって、後継者の経験不足は経営者としての資質として致命的かと言われればそれは違います。新しい環境に順応し、新しい市場や新しい経営スタイルを築き上げることができるのは、やはり次の世代の後継者にしかできないことでしょうし、新しい世代の社員の共感を得ようとするならばそれは後継者の仕事です。さらに「先代を超えたい」という気持ちは後継者になって初めて持ちうる「想い」であって創業者にはなかったものです。
そして一方では長い年月を経て「社風」というものが形成されています。それは創業者の想いが反映されたものであるはずです。一見つかみどころがないものであっても経営を安定的に承継させるうえでは「社風」の急激な変化は避けたいと思うのが普通でしょう。
「経営承継」を考えるときに一見漠然としているこれらのテーマをしっかりと理解し、経営承継の妨げとならないように上手にクリアしていく必要があります。では、そのためにいったい何をどうすればよいでしょうか。様々な対応が考えられるでしょうが、一つ提案させていただくとすれば、創業者と後継者はお互いに「同じ経営思想を共有」していただきたいということです。「思想」とはちょっと大げさな言い方になりました。言い換えると、創業者の「想い」を反映させることができる何らかの経営システムを構築し運営することです。そして、そのシステムの承継を後継者へ託していく。その経営システムの根幹を成しているのは創業者の「経営理念」になるでしょう。そこに時々に応じた中期的ビジョンを示し中期経営計画や単年度経営計画といった具体的な目標数値へと落とし込んでいく。そしてその計画に基づくPDCAサイクルの実施。もちろん社員を巻き込んで会社全体で運営していくべきでしょう。このような経営システムが社内に構築されていれば、「経営承継」はそのシステムを創業者から後継者へと承継させることによって比較的スムースに成し遂げることができると思います。万事が解決するとは思いませんが、経営承継のリスクを回避するためにお薦めするとともに、会計の専門家としてサポートし甲斐があります。
第90話 年頭所感
01st 1月 2012
謹んで新年のお祝いを申し上げます。
旧年中はひとかたならぬご愛顧を賜り誠にありがとうございました。お陰様で弊事務所も新年を迎えることができ、昨年にも増して皆様方のご期待に添えるよう所員一丸となって邁進してまいります。
東日本大震災の発生及び原子力発電所崩壊による放射能拡散といった非常に厳しい現実を突き付けられた平成二十三年でしたが、一方で税制もかつてないほど大変混乱に明け暮れた年でした。民主党の肝入りで登場した相続税の増税改正案は、最終的には国会を通過できずに廃案となりました。税制改正が最終的に廃案にまで追い込まれるほどの混乱ぶりは現在の政局の不安定さを象徴する出来事でした。しかし、資産家への課税強化の思惑は衰えることはなく、新たな改正時期を模索する動きはすでに新聞等でも報道されています。また、ご存知のとおり消費税の改正に向けた準備も着々と推し進められております。与党民主党からは離党者を出すなど更に混迷を深めておりますが、今後の推移から目を離せません。
税制改正の動向にも敏感でありつつ、今年最も注目しているのはTPP(環太平洋戦略的経済協定)の交渉推移です。TPPは日本の経済成長を手に入れる「最後の乗車きっぷ」と言う賛成派に対して、悲観的な見方をする反対派。立場が変われば見方も変わるのは当然ですが、一つ言えることはTPPとは、貿易の完全自由化を目指す経済的な枠組みであり、加盟国間で取引されるサービスを含むすべての品目について100%自由化を実現するものです。したがって、経営者にとっては規模の大小を問わず海外市場に活路を見出すことができるか、あるいはその恩恵を被ることができるか否かが賛成か反対かの判断の分かれ目になるはずです。にもかかわらず、その判断のための情報があまりにも少なすぎることが気になります。TPPに入ると、政府は国内企業と海外企業を同等に扱う義務を負うと言われています。これは「ISD条項」と言われるものですが、「公正な競争」の妨げになるものはたとえ日本の法律で認められていても「ISD条項」を盾に海外から訴えられる可能性があるとうことです。これは、日本の企業がその大小を問わず、国が援助や口をはさむことさえも許されない国際競争の中に放り込まれることを意味します。また、TPPは「ラチェット規定」といって一度自由化したら元に戻すことはできないなどという制約が加わっており、一時的な自由化という選択はあり得ないともいわれています。TPPにより痛手を被ったから後戻りして、再度、国で保護するなどという選択肢はそもそもあり得ないのです。
TPPに対して的確な判断をしようとしても、このよな基本的な情報さえも国民が満足に知り得ていない今の状況を按じてしまうのは考え過ぎでしょうか。
世界があっての日本ということを益々意識せざるを得ない年にあって、更なる競争が待ち構える経営環境の中で生き抜かなければならない中小企業。状況を再認識しながら仕事に取り組んでまいりたいと考えております。本年もお付き合いのほどよろしくお願い申し上げます。
第89話 事業承継
01st 12月 2011
「会社の寿命30年」説とは、どこから出てきたのでしょうか。私が調べたところでは、今から30年ほど前に、あるエコノミー雑誌による独自の調査で報じられたことで30年説が定着したらしいということが分かりました。根拠はどうであれ長寿の秘訣があるとすれば、おそらく経済環境の変化に対応できるか否かが鍵になるのでしょう。経営環境の変化が当時に比べより早く移り変わる今にあっては会社の寿命は更に短命になっているかもしれません。
そして上手に順応して存続し続けた企業がやがて抱える課題は、「事業承継」という問題です。盛んに「事業承継」という言葉を耳にしますが、これは特に中小企業の事業承継対策のことを指しています。近年、中小企業の経営者の高齢化が進んでいる中で、その企業が存続し続けるか否かは地域の雇用や取引先企業の存続に大きな影響を及ぼします。地域の中小企業が次世代の経営陣にスムースにバトンタッチされて引続き存続せしめることは国策と一致するところでもあります。
しかし、個々の中小企業の状況そのものを取り上げてみても、一言で「事業承継」を言い表すことはできません。例えば、企業の寿命を感じさせるほどに疲弊している企業もあれば、長寿を目指して意気揚々とした企業もあります。承継者の問題一つ取り上げてもオーナー家の子息などの親族内承継もあれば、親族以外の従業員を承継者にする場合もありますし、親族内承継であっても身内に複雑な事情を抱えるケースもあります。さらには金融機関からの借入があれば、保証人の引継ぎという問題も避けては通れません。このように一言で「事業承継」といっても100の企業があれば100の異なった事業承継対策が存在し、例えば一つの税制や民法特例を利用して解決できるほど単純なものではありません。それぞれの企業の状況に合わせた承継プランを立てなければならないのです。ですからプランを作成するにはあらゆる側面に気配りした俯瞰的な視点が必要になります。
こうしたことを前提に「事業承継」というテーマを考えるときの課題の整理にあたっては大きく二つの観点で対応すべきだと思います。一つ目は、企業経営そのものの承継という視点です。創業者の方は、大変なご苦労で家業を拡大し企業を大きく育て上げ、その中で失敗を含め様々な経験を積み重ねて今日を迎えている訳です。そもそも承継者に同じ経験などできないものですが、故に経営ノウハウの引継ぎという面で頭を悩まさなければならない可能性があります。二つ目は、創業者の財産の承継があります。財産の承継については、さらに経営権(株式)とそれ以外の財産を遺族がどのように分割するかという問題に分かれます。この場合に知恵を絞るポイントは相続税という税金対策の視点と遺族間でのトラブル回避という視点です。これらの視点において、それぞれの承継や問題解決のスキームをプランニングしなければなりません。ですから、「事業承継」と一言でいっても、あらゆる側面に気配りした俯瞰的な視点で対応してはじめてリスクを回避した「事業承継」というものが可能になるのです。
第88話 バーチャルと現実
01st 11月 2011
御社の経常収支比率は何パーセントかご存知ですか?会社の経営成績を問われると、売上がいくらで、営業利益、経常利益、当期利益はそれぞれいくらだったなどと説明される経営者の方でも経常収支比率について過去の動向、そして将来の目標値にまで言及できる方は少ないと思います。私自身、経営者の方から経常収支比率について質問されることはほとんどありません。しかし、今回は、あえて経常収支比率をとりあげます。
経常収支比率とは文字通り経常支出に対する経常収入の割合を判断する指標で、正常値は最低でも100%を超えなければなりません。100%を下回るということは、通常の営業活動行えば行うほど資金が不足してくるということになり、もちろん借入があっても返済できませんし、外部からの資金注入がなければ早晩倒産することになります。指標算定式は丁寧に説明するとかえってわかりにくいので、数値の意味を理解していただくのがよいと思います。
まず、損益計算書の売上高と営業外収入をベースに、貸借対照表に計上されている受取手形・売掛金や未収入金・前受金などの期首と期末の増減額を調整することで真の現金預金(資金)の収入を導き出すことができます。これが経常収入です。これは、貸借対照表と損益計算書さえあれば正確に計算することができます。例えば、期首売掛金残高80、当期売上高1000、期末売掛金残高100とすれば、キャッシュベースでの入金は80+1000-100、すなわち980ということになります。経常支出も同様の理屈で、損益計算書の売上原価、販売費一般管理費、営業外費用をベースに在庫、支払手形・買掛金や未払金の増減、そして支出を伴わない減価償却費などを差し引けば、正確に導き出すことができます。要は、発生主義で捉えた損益計算書の数値を入出金ベースに修正するわけです。これにより企業の決算書を丸裸にすることができます。在庫や売掛金を水増ししても入出金(キャッシュ)ベースでの経営成績は真実の姿で捉えることがでるわけです。ごまかしはききません。経常利益の推移と経常収支の推移を時系列で並べると粉飾の実態さえ浮かび上がってきます。
「経常利益」は、発生主義という考え方に基づき理論的に計算されるものです。言い換えると収益と費用の差額概念です。極めて理論的ではありますが、キャッシュベースで会社の成績をとらえようとする際にはバーチャルな数値であり現実とのギャップがあることを理解しなければなりません。会社の成績を把握する際には「営業利益」や「経常利益」に必ず目が行きます。それが常識ですし、理論的に導き出されている数値ですから会社を「正しく理解」するには欠かせません・・・。と思っていたら100点満中50点です。
発生ベースで損益をとらえている限り、売上が増加すれば、代金の回収に遅れがあっても利益は増加します。在庫回転率が落ちても売上と売上総利益との関係は一定です。一見何の問題もありません。しかし、経常収支比率は正直に実態を表しています。経常収支比率の変動に意外と無頓着な経営者が多いのではないでしょうか。
第87話 ㈱植松電機~視察報告~
31st 10月 2011
今回の梅研研修旅行は10月16,17日の2日間を利用し北海道赤平市(北海道のほぼ中央)にある㈱植松電機の視察という内容で実施いたしました。梅研では初めてとなる飛行機を利用した遠方への旅にも拘わらず15名の方々にご参加いただきました。
初日は観光、翌日が㈱植松電機への視察という行程でやや忙しいスケジュールではありましたが、大変充実した2日間ではなかったかと思います。
札幌市内からバスで赤平市までは1時間30分程で到着しますが、同市の人口は約12,000人、以前は炭鉱の町として栄え、㈱植松電機も炭坑用の機器を取扱う会社として約50年ほどまえにスタートしたとのことです。時代とともに炭鉱も廃坑となり、現在同社は、リサイクル用マグネットシステムの製作・販売を行う一方で、ロケット開発・製作を行っており、もっぱら同社に対する視察の目的は後者の宇宙開発部門でした。事実、人工衛星打ち上げにも成功しており、総勢20名ほどの中小企業でありながら、視察を通じて感じる宇宙開発に対する情熱と実績には感心することしきりでした。視察の内容が、①宙開発を手掛ける植松努専務の講演、②マグネットシステム見学、③模型ロケットの製作・打ち上げ、④無重力実験塔の見学、⑤実際のロケットエンジンの燃焼実験など大変盛り沢山であるにもかかわらず、体験するもののすべてが新鮮で驚かされるものばかりで、遥々訪ねた甲斐がありました。
参加者全員が作成した模型ロケットは、実際に打ち上げも行いました。それは数十メートルの高さまで達し自動で落下傘が開いて地上までゆっくりと落ちてくる本格的なもので、発射ボタンを押す瞬間は誰でもが童心に帰っていたはずです。同社が製作するロケットエンジンはプラスチック燃料を利用する比較的危険性の少ないものということですが、実際にロケットエンジン噴射実験を目の当たりにした時は、その威力を肌で感じることができ、その時の爆音と炎は、正に「思い描くことができれば、それは実現できる。」と語る植松氏の情熱そのものだと感じた次第です。
暖かく対応していただいた㈱植松電機の皆様方に感謝申し上げます。
第86話 富の主は天下の人々なり
14th 9月 2011
『富の主は天下の人々である。その主の心は我々商人と同じであるから、お金を出すときには一銭でも、もったいないと思うに違いない。その気持ちを推し量って、売る商品、サービスには念を入れ、うっかりした過ちで相手に迷惑をかけることのないように注意して売り渡すならば、買うお客さまも、はじめはお金がもったいないと思うだろうが、その商品の良さを認めれば、そのお金を惜しむ気持も消えるに違いない。その上、第一に倹約に努め、これまで一貫目使っていた費用も、700目で済まして節約し、これまで一貫目得ていた利益も、900目で抑えるように努力する。これが商人の心がけである。
このようにお客さまも喜び、売った商人も喜びその上、世の中の必要な物資を全国津々浦々まで行き渡らせ、人々の心に喜びと安堵をもたらすことができれば、それは自然の変化や万物の生育を司っている天地自然の理と符合するものであり、まことに万々歳である。だからこのような行いの結果、富が山と築かれるようになっても、それは欲心というべきものではない。』
この言葉を残したのは石田梅岩(1685~1744)という人物で、著者曰く『これは「お客様満足」の大切さを訴える世界で初めての宣言にあたるのではないだろうか』と記している。江戸時代に「商人」といえば「士農工商」のいちばん一番低い身分に位置していたことは誰でも知っている。しかし商人が「金儲けの卑しさ」故の差別に苦しみ悩む時代背景でありながらも顧客第一主義の考え方をしっかりと認識しつつ、顧客と富の因果関係を論理的に整理していたことに驚かされる。『商人にとって、お金を儲けさせていただく相手はお客様である。お客様に喜んでいただくことによってはじめてお金がいただける。それが富の元になる。お金が入るとその富は自分のものだと思いがちでる。が、そのお金を払ってくれるのはお客様である。だから富の主はお客様だということになる。』
現代では専らCS(Customer Satisfaction)=顧客満足などと言われるが、250年前から江戸商人は顧客満足の追及をしていたということになり、商売の原点に古いも新しいもないということがよく分かる。
筆者は、「利益は企業が世の中に貢献した結果の報酬である」という松下幸之助の言葉も引用する。お気付きのように梅岩の意としていることと全く同じである。今とは時代背景が全く違い、経営学も簿記もない時代であったにもかかわらず商売とは何かをとことん追求してたどりついた結論「富の主は天下の人々なり」は、インターネットも普及し全ての情報が電子化されるような時代にあっても全く変わりがないのだから、この先未来においても「顧客満足」は企業の永遠のテーマに違いない。
第85話 被災地で何が起きていたのか
11th 8月 2011
東日本大震災の被災地の現場で何が起こっていたのか。テレビや新聞だけでは伝わってこない多くの生々しい出来事がこの本には記録されている。「自衛隊救援活動日誌」(扶桑社)は、陸上自衛隊の中にあって「政策補佐官」という本省と現場の繋ぎ役のようなポストにつく自衛隊員須藤彰さんが被災地の現場で書き溜めた記録です。
その日誌には、3月16日から4月26日の5週間余りの期間に渡る被災地の様々な出来事が書き綴られています。この紙面の中ではほんの一部しか紹介できませんが、須藤さん自身が2児の父親でもあるためでしょうか、被災地の子供たちの様子を伝えている行は特に印象的でした。『先日、東松島市にある避難所を訪れた際、入口で私の娘と同じくらいの子が携帯電話を持って、どこかに楽しそうにかけていました。しばらくして出てくると、まだ同じ子が先ほどと同じように携帯電話をかけています。不思議に思っていると、その子の伯母が「両親が津波で流されてしまったんですよ。もう埋葬もしたんですが、何度説明してもどうしても理解できないようで、両親の携帯にずっと連絡しているんです」と小声で教えてくれました。』・・・あまりに悲しい光景です。
このほか、被災地でのアメリカ海兵隊の活躍ぶりを『大リーグの試合を目の前で見ているような感動すら覚えます。』と紹介するなど、現場の状況をわかりやすく伝えています。また、自衛隊員は被災者の救援活動を最優先するため、自らは風呂に入ることもなく、食事も缶飯(かんめし)・かんぱんで凌ぐなどのふだん知ることのできない裏情報もあります。筆者が日誌の中に『ヨーグルト・納豆・ラーメン』に対する欲求を何度となく書き記していますが、自分の好物が食べられないなかでの異常な執着心や、当り前の食事を『温食』と表現するあたりは、妙に任務の過酷さが伝わってきます。他にも、行政的には『縦割り』『リーダーシップの欠如』、財政的には『非効率配分』『財政不足』、地域的には『縄張り主義』などの問題点の指摘や、危機管理能力を高めるためには『とにかく現場に行くこと』と明確に答えるなど、被災地の現場を体験した筆者の言葉にうなずかざるを得ない。
第84話 今ほど、先を見据えた経営シュミレーショが必要な時はない
01st 7月 2011
3.11 大震災から既に5カ月を過ぎようとしています。7月23日になってようやく政府の東日本大震災からの復興基本方針の原案が公表されました。残念ですがこれはまだ「原案」です。議論はこれからですからほんの入り口にすぎません。
原案によると復旧復興に向こう10年間で23兆円の予算をつぎ込み、その内の大半を当初の5年間に重点計上しています。気になる財源ですが歳出見直しや歳出削減のほか、10兆円は所得税や法人税の増税を中心に賄う計画になっています。しかし増税の内容については今のところ明らかにされていません。
話は変わりますが、経済界では大震災にみまわれる前から大企業を中心に経営環境の状況を「5重苦」と称して、政府に対してその改善を求めていました。「5重苦」とは
①円高、②高い法人税率、③貿易自由化の遅れ、④労働規制、⑤環境対策
ご存知のようにこうした経営環境が続けばやがて日本国内の産業のさらなる空洞化を招きかねないという懸念に繋がっている訳です。大震災以降は、ここに⑥電力不足が加わり「6重苦」といわれるようになってきました。大震災以降、東南アジアを中心に日本企業の自国への進出に密かに期待が寄せられているでしょうから、正にウェルカム状態でしょう。
「苦」の一つとされている「高い法人税率」については平成23年度税制改正で実質5%の引き下げが行われる予定でした。しかし実現の可能性はなくなり、それどころか復興基本方針で所得税とともに法人税増税で財源を確保せざるを得ない状況となってきました。国難であれば国民として応分の負担を求められるのは当然ですし、協力する覚悟を持たなければなりません。しかし、所得税や法人税の増税の影響が国内景気に及ぼす影響はどの程度のものになるのかは未知数です。セーフティーネットや返済猶予によって延命している中小企業も少なからず存在します。国が打ち出すそうした政策もいずれ財源が尽きます。そして復旧復興財源に対する国民負担を求められる時期と機を同じくしてそれは間近に迫っています。残念ですが周辺に力尽きる企業があらわれるかもしれません。経営者はどんなに厳しい状況でも企業を存続させるべく責任がありますが、それが容易でないことも事実です。
しかし、一つ言えることがあります。今後更に売上の減少が懸念されるなど想定される状況の中で自社の姿を客観的な数値で捉えている社長は、少なくとも漠然と不安を抱いている社長より判断や決断に迷いがありません。それは、予測(計画)とのズレをいち早くキャッチできる具体的なシミュレーションを手元に持っているからです。キャッシュフローの観点からも自社の限界をシュミレーションできていれば、早め早めの対応が可能となります。新潟中央会計では、御社の複数のキャッシュフローを含めた将来像をシュミレーションするお手伝いができます。遠慮なくお申し付けください。
第83話 連帯保証慣行の見直し
31st 5月 2011
以前、保証人制度について説明したことがあります。「保証人と相続」のテーマの時は、保証人の配偶者や子が相続の時はその責任を引き継ぐという説明をさせていただきましたし、「保証人と連帯保証人」の時は、連帯保証といった場合には「催告の抗弁権」と「検索の抗弁権」が無いから、できれば「連帯」の2文字は削除する交渉をしてくださいとアドバイス致しました。
まだ、ほとんどの方はご存じないかもしれませんが、今年の2月28日に金融庁から『「主要行等向けの総合的な監督指針」及び「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)の公表について』というものがホームページ上に掲載されました。そこには大変重要なことが載っています。その一部を紹介します。
経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行を確立し、また、保証履行時における保証人の資産・収入を踏まえた対応を促進するため、監督指針に新たな項目を追加するとともに、金融機関に対して、次の対応を求める。
●経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする方針を定めること
●経営への関与の度合いを確認の上、例外的に経営者以外の第三者との間で個人連帯保証契約を締結する場合には、契約者本人に対し、原則として、経営に実質的に関与していない場合であっても保証債務を履行せざるを得ない事態に至る可能性があることについての特段の説明を行うこと、及び保証人から説明を受けた旨の確認を行うこと
●保証債務弁済の履行状況及び保証債務を負うに至った経緯などその責任の度合いに留意しつつ、保証人の生活実態を十分に踏まえて判断される各保証人の履行能力に応じた合理的な負担方法とするなど、きめ細かな対応を行うこと
これまで経営者以外の第三者で個人連帯保証を求められていたようなケースには、配偶者や親もしくは子、ときには取引先であったり友人がその対象になるなどの例があります。特に子供の事業資金借入に対してその経営に関係のない親が署名する例などは、親なんだからむしろ当り前といった風潮すらありました。この度の監督指針(案)によれば、原則として経営者以外の第三者に対して連帯保証の署名を求めることはできなくなります。これは従来の慣習を見直すことですから大きな改正となりますし、歓迎すべきことでしょう。
さて、経営者としてこの変化をどう捉え理解するかということです。悪しき慣習の見直しとはいえ、融資する金融機関もリスク回避の手段は必要です。既に担保としての不動産価値も下がっていますし、さらに保証人の範囲も限定されることになれば、貸出先の事業や資産内容のチェッック、将来的なキャッシュフローの見極めなど審査をより慎重に行わざるをえないでしょう。この度の監督指針の改正に伴い、金融機関との付き合い方に対する経営者の意識も変わっていかなければならないのです。
第82話 未曾有の大震災、「キャッシュ」を再認識せよ
15th 4月 2011
3月11日の東日本大震災は誰もが経験したことのない未曾有の災害となりました。地元新潟は津波による災害に直接遭遇することはありませんでしたが、今後、経済的な側面でどのような影響が及ぶのか心配されるところです。震災復興などにともなう一時的な需要が一部で生じており、その対応で忙しい会社もあります。しかし、復興需要もいずれは一段落します。問題はその後の経済状況の行方です。国民負担増加による更なる消費低迷を心配する専門家もいますが、経営環境がいったいどう変化するのか、それはだれもが体験したことのない未知の世界です。軽々に語ることはできません。厳しい経営環境が続くと予測される場合、企業経営者はどう対応すべきでしょうか。たとえ最悪の経営環境になろうとも会社は存続させなければなりません。「言うは易し行うは難し」です。しかし、ここで思い出していただきたいのは「会社の存続」は「キャッシュ」で担保されるということです。良くも悪くも最後は「カネ」なんです。これを肝に銘じておいていただきたいと思います。
日本国中が困難に直面しているときに、他人は当てになりません。国や地方公共団体の政策的支援を利用することはあっても、当てにしていたら会社は潰れます。会社は自分(たち)で守るしかないのです。そして最後の砦はキャッシュを確保できているかどうかが鍵になります。ここであえて「利益」といわずに「キャッシュ」と言わせていただいています。もちろん会社は「利益」を獲得するために存在している訳で、当然多ければ多いほど自己資本を押し上げ、安定した会社となります。ですから理想的には資金を利益から調達するのがベストです。しかし今後従来通りの売上や利益を確保できるかどうか、あるいは右肩下がりもあり得ます。今からそれに備えなければならないのです。打つ手が限定された厳しい環境の中では「キャッシュ」を確保することが備えの基本だと思います。今ほどキャッシュフロー重視の経営にシフトすべき時はありません。あらためてご自分の会社の状況を見直してください。将来の経営環境が確実に見通せる状況でないとすれば、「カネ」と「モノ」の循環の中で出来る限り「カネ」の状態を維持し、在庫や売掛金、あるいは設備といった「モノ」の状態で停滞させることを極力排除し、いかなる環境でも生き延びることができるよう改善していかなければなりません。仮に新規設備などに投資する場合であっても、手元資金に余裕を持たせ、いつでも撤退できる体制の中で行うべきです。今は借入依存で新たな行動を起こすべき時ではありません。撤退=倒産の危険があります。
場合によっては、固定費についても厳しくチェックを入れる必要があります。状況が悪化すれば人件費も例外ではなくなります。経営者として予め想定しておく必要があるでしょうし、従業員も突然の話では影響が大きすぎます。「想定外で対応が遅れました」は通用しません。また、雇用調整助成金などを最大限に活用することも怠ってはいけません。
商売人の原点「カネ儲け」(Make Money)に戻れと言ったのは、巨額の損失の償却に成功した伊藤忠商事の丹羽宇一郎氏です。厳しい環境から抜け出した経営者の言葉を忘れずにこの難局を乗り切ってください。







